HOME/CINEMA/ 2026-01-25

映画『ハウス・シャーク』ネタバレなし感想・評価|家の中にサメがいる!物理法則を無視した狂気のDIY映画【レビュー】

映画『ハウス・シャーク』ネタバレなし感想・評価。「海に行かなければ助かる」という常識を覆す、室内型サメパニック。トイレから、壁から、サメが襲ってくる!DIY精神あふれる最低予算エンタメ。

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SCORE
RANKC

60秒で結論買うべき?観るべき?

GOOD

「家の中にサメ」というワンアイデアを突き通す根性。独特すぎるキャラクターたち。

BAD

とにかく長い(112分)。会話が無駄に多い。下品。

その発想はあった(けどやるなよ)

サメ映画界の不文律。「海(あるいは水辺)に近づかなければ安全」。 本作は、その最後の聖域を土足で踏み荒らしました。

「家にサメが出る」 この一言で、人類の逃げ場はなくなりました。 トイレの便器から、キッチンのシンクから、あろうことか壁を突き破ってサメが現れる。 酸素? 水圧? そんな野暮なことを聞いてはいけません。

「だって、ハウス・シャークだから」 その一点張りで押し通す潔さ。 開始10分で「あ、これ真面目に観たら負けだ」と悟らせてくれる親切設計です。

チープさを逆手に取った「確信犯」

映像はお世辞にも綺麗とは言えません。 サメの造形は、文化祭の出し物レベル。 血糊はケチャップのような質感。

しかし、監督のロン・ボンクはそれを隠そうともしません。 むしろ「ほら、チープだろ? 笑えよ!」と言わんばかりに、カメラを寄せてきます。

特にトイレでの襲撃シーン。 お尻を噛まれるという、人類共通の原始的な恐怖(と笑い)を、これでもかと執拗に描きます。 「バカバカしい」と笑っているうちに、なんとなく「いや、実際にあったら怖いかも……」と思わせる勢いがあります。

BEYOND THE 60 SECONDSここから先は、深掘りレビュー。
Technical Review

濃すぎるキャラクターたちの宴

この映画の真の主役は、サメではありません。 サメを退治しようと集まった、イカれた男たちです。

評価項目評価
ハウス・シャーク専門家世界でただ一人の胡散臭さ
元不動産屋なぜ戦うのか不明なテンション
主人公唯一のツッコミ役だが限界

【解説】 特に「世界で唯一のハウス・シャーク専門家」を名乗る男、ザカリー。 彼のキャラクター造形は、映画史に残る……とは言いませんが、夢に出るレベルで強烈です。 インディ・ジョーンズとランボーを足して、知能指数を30くらいにしたような男。

彼が語る「ハウス・シャークの生態」解説が、無駄に長くて細かい。 「奴らは配管を通ってやってくる」だの「壁の中で呼吸する」だの。 その設定を考える熱量があるなら、もう少しサメの着ぐるみをなんとかして欲しかった。 彼らの掛け合い漫才を見ているだけで、映画の半分が終わります。

無駄に長い上映時間という拷問

本作の最大の欠点。それは「112分」という長尺です。 この内容なら、どう考えても70分、いや45分でまとまります。

中盤、男たちが家の中でキャンプを張り、サメを待ち伏せするシーン。 ここでの会話劇が、永遠に続くかのように感じられます。 アドリブなのか台本なのか分からない、グダグダな口論。 「早くサメ出せよ!」と、画面に向かって叫んだ視聴者は私だけではないはず。

しかし、この「退屈な時間」があるからこそ、終盤の怒涛の展開(カオス)が輝く……のかもしれません。 いや、やっぱり単に編集が下手なだけでしょう。

スター・ウォーズへの風評被害

ネタバレになるので詳しくは言えませんが、クライマックスで唐突に『スター・ウォーズ』パロディが始まります。 しかも、かなりガッツリと。 「え、今までサメ映画観てたんだよね?」と困惑する暇も与えず、物語は宇宙規模(精神的な意味で)へ。

権利関係はどうなっているのか。 怒られないのか。 そんな心配をよそに、映画はやりたい放題やって終わります。 この「何でもあり」なカオス感こそ、インディーズ映画の醍醐味であり、同時に最大のウィークポイントでもあります。

なぜか感動的なラスト(錯覚)

不思議なことに、見終わった後、少しだけ爽やかな気分になります。 「あんなにくだらない時間を過ごしてしまった」という脱力感が、逆に日々のストレスを洗い流してくれるのです。

男たちの友情(?)。 父と子の絆(?)。 そして、家を守るという男のプライド(?)。 それらが、低予算の映像の中でグチャグチャに混ざり合い、奇跡のような化学反応を起こして……いません。 ただただ、疲れるだけです。

でも、その疲れは、きっと心地よい疲れです。 マラソンを完走した後のような。 (ただし、走ったコースは泥沼ですが)

結論:日曜の午後の「睡眠導入剤」

真剣に観てはいけません。 友達と酒を飲みながらツッコミを入れるか、日曜の午後に「何か流しておきたい」時に最適です。 画面を見なくても、音声だけで大体何が起きているか分かります(悲鳴か、馬鹿な会話のどちらかなので)。

『ジョーズ』へのリスペクトは皆無ですが、映画作りへの「歪んだ愛」は感じられます。 家の中にサメが出る。 そのワンアイデアだけで112分を走り抜けた勇気だけは、讃えたいと思います。 二度と観ませんが。

作品情報

時間112分
視聴難易度低い
家族向け要確認
配信Amazon Prime
小林 祐太
WRITTEN BY

小林 祐太

TV60編集長。脚本構造と映像技術の分析に基づいた『構造批評』を得意とする。ガジェットレビューでは、スペック数値よりも『生活への定着度』を重視し、最低1ヶ月以上の実使用を経た上での評価を徹底している。

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