映画『ハウス・シャーク』ネタバレなし感想・評価|家の中にサメがいる!物理法則を無視した狂気のDIY映画【レビュー】
映画『ハウス・シャーク』ネタバレなし感想・評価。「海に行かなければ助かる」という常識を覆す、室内型サメパニック。トイレから、壁から、サメが襲ってくる!DIY精神あふれる最低予算エンタメ。
60秒で結論買うべき?観るべき?
GOOD
「家の中にサメ」というワンアイデアを突き通す根性。独特すぎるキャラクターたち。
BAD
とにかく長い(112分)。会話が無駄に多い。下品。
その発想はあった(けどやるなよ)
サメ映画界の不文律。「海(あるいは水辺)に近づかなければ安全」。 本作は、その最後の聖域を土足で踏み荒らしました。
「家にサメが出る」 この一言で、人類の逃げ場はなくなりました。 トイレの便器から、キッチンのシンクから、あろうことか壁を突き破ってサメが現れる。 酸素? 水圧? そんな野暮なことを聞いてはいけません。
「だって、ハウス・シャークだから」 その一点張りで押し通す潔さ。 開始10分で「あ、これ真面目に観たら負けだ」と悟らせてくれる親切設計です。
チープさを逆手に取った「確信犯」
映像はお世辞にも綺麗とは言えません。 サメの造形は、文化祭の出し物レベル。 血糊はケチャップのような質感。
しかし、監督のロン・ボンクはそれを隠そうともしません。 むしろ「ほら、チープだろ? 笑えよ!」と言わんばかりに、カメラを寄せてきます。
特にトイレでの襲撃シーン。 お尻を噛まれるという、人類共通の原始的な恐怖(と笑い)を、これでもかと執拗に描きます。 「バカバカしい」と笑っているうちに、なんとなく「いや、実際にあったら怖いかも……」と思わせる勢いがあります。
濃すぎるキャラクターたちの宴
この映画の真の主役は、サメではありません。 サメを退治しようと集まった、イカれた男たちです。
| 評価項目 | 評価 |
|---|---|
| ハウス・シャーク専門家 | 世界でただ一人の胡散臭さ |
| 元不動産屋 | なぜ戦うのか不明なテンション |
| 主人公 | 唯一のツッコミ役だが限界 |
【解説】 特に「世界で唯一のハウス・シャーク専門家」を名乗る男、ザカリー。 彼のキャラクター造形は、映画史に残る……とは言いませんが、夢に出るレベルで強烈です。 インディ・ジョーンズとランボーを足して、知能指数を30くらいにしたような男。
彼が語る「ハウス・シャークの生態」解説が、無駄に長くて細かい。 「奴らは配管を通ってやってくる」だの「壁の中で呼吸する」だの。 その設定を考える熱量があるなら、もう少しサメの着ぐるみをなんとかして欲しかった。 彼らの掛け合い漫才を見ているだけで、映画の半分が終わります。
無駄に長い上映時間という拷問
本作の最大の欠点。それは「112分」という長尺です。 この内容なら、どう考えても70分、いや45分でまとまります。
中盤、男たちが家の中でキャンプを張り、サメを待ち伏せするシーン。 ここでの会話劇が、永遠に続くかのように感じられます。 アドリブなのか台本なのか分からない、グダグダな口論。 「早くサメ出せよ!」と、画面に向かって叫んだ視聴者は私だけではないはず。
しかし、この「退屈な時間」があるからこそ、終盤の怒涛の展開(カオス)が輝く……のかもしれません。 いや、やっぱり単に編集が下手なだけでしょう。
スター・ウォーズへの風評被害
ネタバレになるので詳しくは言えませんが、クライマックスで唐突に『スター・ウォーズ』パロディが始まります。 しかも、かなりガッツリと。 「え、今までサメ映画観てたんだよね?」と困惑する暇も与えず、物語は宇宙規模(精神的な意味で)へ。
権利関係はどうなっているのか。 怒られないのか。 そんな心配をよそに、映画はやりたい放題やって終わります。 この「何でもあり」なカオス感こそ、インディーズ映画の醍醐味であり、同時に最大のウィークポイントでもあります。
なぜか感動的なラスト(錯覚)
不思議なことに、見終わった後、少しだけ爽やかな気分になります。 「あんなにくだらない時間を過ごしてしまった」という脱力感が、逆に日々のストレスを洗い流してくれるのです。
男たちの友情(?)。 父と子の絆(?)。 そして、家を守るという男のプライド(?)。 それらが、低予算の映像の中でグチャグチャに混ざり合い、奇跡のような化学反応を起こして……いません。 ただただ、疲れるだけです。
でも、その疲れは、きっと心地よい疲れです。 マラソンを完走した後のような。 (ただし、走ったコースは泥沼ですが)
結論:日曜の午後の「睡眠導入剤」
真剣に観てはいけません。 友達と酒を飲みながらツッコミを入れるか、日曜の午後に「何か流しておきたい」時に最適です。 画面を見なくても、音声だけで大体何が起きているか分かります(悲鳴か、馬鹿な会話のどちらかなので)。
『ジョーズ』へのリスペクトは皆無ですが、映画作りへの「歪んだ愛」は感じられます。 家の中にサメが出る。 そのワンアイデアだけで112分を走り抜けた勇気だけは、讃えたいと思います。 二度と観ませんが。
作品情報

小林 祐太
TV60編集長。脚本構造と映像技術の分析に基づいた『構造批評』を得意とする。ガジェットレビューでは、スペック数値よりも『生活への定着度』を重視し、最低1ヶ月以上の実使用を経た上での評価を徹底している。
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