映画『インターステラー』ネタバレなし感想・評価|愛と物理学の特異点に涙するSFの金字塔【レビュー】
映画『インターステラー』ネタバレなし感想・評価。クリストファー・ノーランが描く、宇宙への壮大な旅と父娘の愛。相対性理論がもたらす残酷な時間のズレに、あなたの涙腺は崩壊する。
脳みそが沸騰し、心臓が握り潰される169分
正直に言います。 観終わった後、しばらく立ち上がれませんでした。 (比喩ではなく、本当に足の力が抜けました)
宇宙の静寂と、圧倒的な孤独。 そして、鼓膜を震わせるオルガンの轟音。
これは単なるSF映画ではありません。 「体験」です。
映画館の椅子に座っていたはずが、気づけば次元の彼方へ放り出されている。 そんな感覚に陥るのです。
「愛」というあやふやな概念を、物理で殴り証明する暴力的なまでの美しさ
SF映画において「愛」を持ち出すと、大抵はチープになります。 「結局は愛が勝つんでしょ?」という、あの冷めた感覚。
しかし、この作品は違います。
物理学、相対性理論、ブラックホール。 それらの極めてロジカルで冷徹な科学の積み上げの上に、 「愛」という変数をぶち込んでくるのです。
しかも、それが数式のように美しく成立している。 (悔しいですが、ボロボロ泣きました)
徹底的にリアルを追求した、ノーラン監督の変態的なこだわり
クリストファー・ノーランという監督は、間違いなく「変態」です(褒め言葉)。
CG全盛のこの時代に、できる限り実写で撮影しようとする狂気。 トウモロコシ畑を実際に育てて燃やしたり、 宇宙船のセットを実物大で作ったり。
その「質感」が、画面から滲み出ているのです。
特に、宇宙船内の描写。 埃っぽさや、ボタンの摩耗具合、閉塞感。 それらが、私たちが生きる「現実」と地続きであることを強烈に意識させます。
キラキラした未来の宇宙船ではありません。 薄汚れていて、無骨で、しかし頼もしい。 そのリアリティがあるからこそ、 未知の惑星に降り立った時の「異物感」が際立つのです。
| 評価項目 | 評価 |
|---|---|
| 脚本 | 緻密すぎて頭痛がするレベル |
| 映像美 | 宇宙の静寂が怖くなる |
| 科学考証 | オタクも唸る完成度 |
【解説】 脚本は、弟のジョナサン・ノーランと共に、キップ・ソーンという著名な物理学者の監修を受けています。 つまり、嘘八百のSFではなく、「理論上あり得るかもしれない」ラインを攻めているのです。 だからこそ、説得力が段違い。 「ワームホールってこう見えるんだ」という映像表現は、後の学術研究にも影響を与えたほど。 ただの娯楽映画の枠を超えています。
相対性理論がもたらす、残酷すぎる「時間」の恐怖
この映画の真の敵は、エイリアンでも怪物でもありません。 「時間」です。
相対性理論によれば、重力の強い場所では時間の進みが遅くなる。 あちらでの1時間が、地球での7年間に相当する。 この設定が、あまりにも残酷なドラマを生み出します。
ちょっとしたミッションの遅れが、 地球で待つ家族にとっては数十年という歳月になってしまう。 (想像しただけで胃が痛くなります)
ビデオレターのシーン。 あれを見て、泣かない人間がいるのでしょうか?
積み重なった時間の重みが、画面越しに雪崩のように押し寄せてくる。 浦島太郎なんて目じゃありません。
取り返しのつかない喪失感と、それでも前に進まなければならない使命感。 マシュー・マコノヒーの演技が、その苦悩を完璧に表現しています。 あの表情だけで、アカデミー賞を3つくらいあげたい気分です。
ハンス・ジマーの音楽は、もはや「酸素」である
この映画を語る上で、ハンス・ジマーの音楽は外せません。 というか、音楽がなければこの映画は成立しなかったでしょう。
パイプオルガンを用いた、宗教的ですらある重厚なスコア。 宇宙の壮大さと、人間のちっぽけさ。 そして、未知への畏敬の念。 それらすべてが、音の波となって押し寄せてきます。
特に、ドッキングシーンの音楽。 (あそこは、手汗でコントローラーが壊れるかと思いました)
緊迫感を高める旋律と、無音の使い分け。 音がない宇宙空間の静寂を、これほど雄弁に語る「音」があるでしょうか。
映画館のスピーカーで聴くべき音ですが、 良いヘッドホンを用意して、部屋を真っ暗にして聴いてください。 それだけで、トリップできます。
科学と感情の奇跡的な融合、そして「答え」
SF映画は、しばしば「理屈っぽい」か「感情論に逃げる」かのどちらかになりがちです。 しかし、『インターステラー』はその両極端を、綱渡りのようなバランスで繋ぎ止めています。
難解な用語が飛び交い、5次元だの事象の地平面だのと、 文系脳を焼き切りにくる展開が続きます。 (正直、半分くらい理解できていない自信があります)
それでも、物語の核にあるのは、いつだって「父と娘」です。 遠く離れていても、時空を超えても、繋がろうとする意志。 それが、物理法則を超越する唯一の力なのかもしれません。
ラストシーンの解釈は分かれるところでしょう。 あれを「ご都合主義」と切って捨てるのは簡単です。
でも、私は信じたい。 人間が持つ「想い」の強さが、いつか本当に時空を超える日が来ることを。 そんなロマンを、本気で信じさせてくれる力が、この作品にはあります。
結論:映画館で観なかったことを一生後悔するレベル
もし、まだこの映画を観ていないのであれば、 あなたはとてつもなく幸運です。 あの衝撃を、初見で味わえるのですから。
物理学が苦手? 長い映画は嫌い? そんな些細な理由は、ブラックホールに投げ捨ててください。
これは、観るべき映画ではありません。 「体験」すべき、人類の遺産です。
スマホの画面ではなく、できるだけ大きな画面で。 そして、誰にも邪魔されない時間を確保して。 宇宙の深淵を覗き込んでください。
ただし、覚悟してください。 覗き返してくるのは、あなた自身の「愛」の形かもしれません。
作品情報

小林 祐太
TV60編集長。脚本構造と映像技術の分析に基づいた『構造批評』を得意とする。ガジェットレビューでは、スペック数値よりも『生活への定着度』を重視し、最低1ヶ月以上の実使用を経た上での評価を徹底している。
CINEMAの他の記事

映画『TENET テネット』
「理解しようとするな、感じろ」。ノーラン監督からの挑戦状は、脳みそが沸騰するほどの快感と疲労を約束します。

映画『サイコ・ゴアマン』ネタバレなし感想・評価|全宇宙が震える、最高に愛おしい特撮破壊劇【レビュー】
映画『サイコ・ゴアマン』ネタバレなし感想・評価。残虐宇宙人が、生意気な地球人の少女に絶対服従!?血しぶきと爆笑の向こう側に、まさかの家族愛が見える、奇跡のB級特撮映画。

映画『アタック・オブ・ザ・キラートマト』ネタバレなし感想・評価|トマトが転がるだけで人は死ぬ。不条理ギャグの金字塔【レビュー】
映画『アタック・オブ・ザ・キラートマト』ネタバレなし感想・評価。巨大化したトマトが人類を襲う!1978年のカルト的駄作にして名作。軍隊の無能さ、意味不明なミュージカル、そしてトマト。
この記事をシェアする