映画『ベロシパストール』ネタバレなし感想・評価|牧師が恐竜に変身して忍者を倒す。以上【レビュー】
映画『ベロシパストール』ネタバレなし感想・評価。牧師×恐竜×忍者。予算不足を逆手に取った確信犯的な演出の数々に、腹筋が崩壊すること間違いなし。伝説の「VFX: Car on Fire」を見逃すな。
60秒で結論買うべき?観るべき?
GOOD
「VFX: Car on Fire」という、映画史に残る伝説の文字演出
BAD
恐竜の着ぐるみが、ドン・キホーテで2980円で売ってそうなレベル
予算75ドルの衝撃(※推定)
この映画を観るにあたって、頭を空っぽにする必要はありません。 なぜなら、映画自体の中身が空っぽだからです。
タイトルは「Velociraptor(ヴェロキラプトル)」と「Pastor(牧師)」を掛け合わせた造語。 つまり「恐竜牧師」。 このダジャレを映像化するためだけに、大人たちが集まって真剣にふざけた結果がこれです。
開始5分で気づくでしょう。 「あ、これ、文化祭の出し物だ」と。
しかし、そのチープさを隠そうともしない潔さが、 不思議と清々しいカタルシスを生んでくれます。 高級フレンチに疲れた舌に、駄菓子の「キャベツ太郎」が刺さるような感覚です。
伝説の「VFX: Car on Fire」
この映画を語る上で絶対に外せないのが、冒頭の車の爆発シーンです。
通常、低予算映画でも、フリー素材の炎を合成するくらいの努力はします。 しかし、この監督は違いました。
燃える車が映るべき画面に、ただ一言。 「VFX: Car on Fire(VFX:燃える車)」 というテロップが表示されるのです。
目を疑いました。 えっ? 今、文字で説明した? 観客の想像力に丸投げ?
この瞬間、私はこの映画に負けを認めました。 「予算がないから撮れませんでした」と正直に言うスタイル。 ある意味、究極のミニマリズムです。
恐竜のクオリティが放送事故レベル
主人公の牧師が、怒りで恐竜に変身します。 さあ、どんなCGモンスターが現れるのか。
出てきたのは、ゴム製の着ぐるみでした。 しかも、中の人の肘が見えそうなくらいブカブカの。
さらに、恐竜の「手」だけが映るシーンでは、 明らかに「ゴム手袋をつけた人間の手」が画面端からニュッと出てきます。
怖いとか、凄いとかいう感情は湧きません。 ただ、「頑張れ……」という親心のようなものが芽生えるだけです。
| 項目 | クオリティ | 備考 |
|---|---|---|
| 恐竜の造形 | ★☆☆☆☆ | ドンキホーテで購入疑惑 |
| 忍者の衣装 | ★★☆☆☆ | ネット通販の安物感 |
| 脚本の勢い | ★★★★★ | 暴走機関車 |
【解説】 恐竜の着ぐるみは、Amazonで購入した安物という説が有力です。 口の開閉もままならず、ただ「そこにいる」だけの存在感。 それでも、主人公が真剣な顔で「俺の中の怪物が……」と悩んでいるので、 笑ってはいけないという謎の緊張感が生まれます。
忍者軍団という名の学芸会
恐竜牧師の敵として立ちはだかるのは、なぜか忍者です。 彼らのアジトは中国奥地の山奥という設定ですが、 どう見てもアメリカの近所の公園で撮影されています。
忍者たちのカンフーアクションも、 日曜日の朝に公園で太極拳をしているお年寄りのような緩さ。 緊迫感はゼロです。
なぜ忍者なのか? それは、監督が「恐竜と戦わせたらカッコいいもの」を考えた結果、 忍者が選ばれたからでしょう。 この安直な発想こそが、B級映画の醍醐味です。
謎のヒロイン(娼婦)とのロマンス
B級映画の華といえばロマンスですが、本作も例外ではありません。 牧師を支えるヒロインは、なぜか娼婦。
彼女は言います。 「医者も弁護士も知ってるけど、恐竜に変身する牧師は初めてよ」
……まあ、そうでしょうね。 このシュールな会話が、真面目な顔で繰り広げられます。
二人が惹かれ合う過程も雑すぎて最高です。 「吊り橋効果」という言葉がありますが、 この映画の場合、「吊り橋自体が落ちている」レベルの強引さで物語が進みます。
宗教と恐竜のまさかの融合
主人公は牧師であることに誇りを持っています。 しかし、恐竜の力にも目覚めてしまう。
「神の教えに背くのではないか?」 「いや、悪を滅ぼすための力だ」
この葛藤が、意外にも物語の軸になっています。 (着ぐるみの姿で悩まれても困りますが)
キリスト教的な「赦し」や「自己犠牲」のテーマが、 恐竜パニックの中に無理やりねじ込まれている。 その歪なバランスが、観る者の脳を揺さぶります。 もしかしたら、これは深い宗教映画なのかもしれません(嘘です)。
結論:75分間、ツッコミ続けるスポーツ
『ベロシパストール』は、映画鑑賞ではありません。 画面に向かって「なんでだよ!」とツッコミを入れる、参加型のエクササイズです。
ストーリーの整合性? 演技力? 映像美? そんなものを求めてはいけません。
ここにあるのは、 「バカなことを全力でやる」という、大人の悪ふざけの精神だけです。
お酒を飲みながら、 友人たちとガヤガヤ観るには最高のコンテンツです。 シラフで一人で観ると、虚無感に襲われる可能性があるので注意してください。
見終わった後、あなたの人生には何も残りません。 ただ、「VFX: Car on Fire」の文字だけが、 網膜に焼き付いていることでしょう。
作品情報

小林 祐太
TV60編集長。脚本構造と映像技術の分析に基づいた『構造批評』を得意とする。ガジェットレビューでは、スペック数値よりも『生活への定着度』を重視し、最低1ヶ月以上の実使用を経た上での評価を徹底している。
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