映画『キラーソファ』ネタバレなし感想・評価|殺人家具界のニューウェーブ、あるいはただのソファー【レビュー】
映画『キラーソファ』ネタバレなし感想・評価。リクライニングチェアが人間に恋をして殺戮を繰り返す?狂気のプロット、シュールな映像、そして意外と真面目な作り。家具に殺される恐怖(と笑い)を徹底レビュー。
その「座り心地」、命がけ
正直に言います。私は疲れていました。 日々の喧騒から逃れ、ふと「何も考えずに見られる映画」を探していたのです。
そこで出会ったのが、この『キラーソファ』。 タイトルを見た瞬間、脳の処理が一時停止しました。「キラー(殺人)」で「ソファ(家具)」。 タイヤが人を殺す『ラバー』や、ジーンズが人を襲う『スラックス』を見てきた私ですが、まさか「くつろぎの象徴」であるソファに牙を剥かれる日が来るとは。
冒頭から、この映画は私の期待(という名の不安)を裏切りません。 届いたソファが、どう見ても「安いリクライニングチェア」なのです。高級感もなければ、呪われたオーラもない。ただの、ちょっと座り心地が良さそうな椅子。
しかし、こいつが動くのです。よちよちと。可愛らしく。そして、人を殺す。
(今、私は何を見せられているんだろう?)
そんな哲学的な問いが、開始10分で頭をよぎり続けました。
恋する家具は、ストーカー気質
驚くべきことに、このソファには「感情」があります。あろうことか、ヒロインに恋をしてしまうのです。 ただの殺戮マシーンではありません。嫉妬に狂う、重い男(椅子)なのです。
ヒロインに近づく男たちを、次々と血祭りにあげていくその姿は、ある種の純愛映画に見えなくもありません。 いや、見えませんね。どう見ても変態家具です。
特に秀逸なのが、ソファが「覗き」をするシーン。窓の外からじっとヒロインを見つめるソファ。 そのボタン(目?)が、妙に哀愁を帯びているように見えるから不思議です。 「家具に感情移入する」という、人類史上稀に見る体験をさせてくれたことには感謝すべきかもしれません。
ただし、ホラー映画としての「怖さ」を期待してはいけません。これは、極上のシュール・コメディです。
狂気の設定と、妙に真面目な演出
この映画の最大の狂気は、制作陣が「真面目に」撮っていることです。 ふざけた設定なのに、カメラワークや照明は意外としっかりしています。
| 評価項目 | 評価 |
|---|---|
| 脚本 | 狂気(褒め言葉) |
| 映像美 | 無駄に綺麗 |
| ソファの演技 | アカデミー賞モノ |
【解説】 特に評価したいのは、やはり「ソファの演技」です。表情筋などないはずの家具から、怒り、哀しみ、欲望が伝わってくる。 これはCGの力なのか、それともパペット操演者の魂の叫びなのか。布の張り具合や、リクライニングの角度ひとつで感情を表現する技術は、まさに神懸かっています。 一方で、人間側のドラマは驚くほどチープ。ですが、それが逆に「ソファの異常な存在感」を際立たせています。
視聴後の「家具への疑心暗鬼」
見終わった後、自宅のソファを見る目が変わりました。
「お前も、夜中に動いているんじゃないか?」 「私が座っている時、内心どう思っているんだ?」
そんなパラノイアに襲われます。家具屋に行くのが少し怖くなりました。 特に、ボタン留めのあるクラシックなデザインのソファ。あれは完全に「顔」です。
この映画は、私たちの日常生活に潜む「家具への無意識の信頼」を揺るがします。 (いや、揺るがないか。ただの椅子だし。) そんな冷静な自分と、少し怯える自分が同居する、奇妙な後遺症が残りました。
音響効果:バネの軋みは死の旋律
地味に素晴らしいのが、音響効果(SE)です。 ソファが動く時の「ギシッ…ギシッ…」という音。リクライニングが跳ね上がる時の「バイン!」という音。 これらが、殺人シーンでは不気味なアクセントとなり、コメディシーンでは間の抜けた効果音となります。
特に、獲物を捕らえる時のバネの音は、生理的な嫌悪感を煽る絶妙な音作りです。 「家具の音」だけでここまでサスペンスを作れるのかと、感心せざるを得ません。 音楽も、妙に重厚でシリアスなスコアが多用されており、画面の馬鹿馬鹿しさとのギャップが笑いを誘います。
多角的な分析:B級映画における「無機物ホラー」の系譜
本作は、『クリスティーン』(殺人車)や『デス・ベッド』(殺人ベッド)といった「無機物ホラー」の系譜に連なる作品です。 しかし、それらの先人たちと異なるのは、「キャラクター性」の強さです。
ただ呪われているのではなく、明確な「自我」と「欲望」を持ったキャラクターとして描かれています。 これは、近年の『M3GAN/ミーガン』などのAI人形ホラーにも通じる(?)モダンなアプローチと言えなくもありません。
「テクノロジー(本作では呪術ですが)と人間の歪んだ関係」 そんな深読みもできなくはないですが、基本的には「椅子が人を殺す」という一点突破の出オチ映画です。 その出オチを80分間持続させたパワーは、評価に値します。
結論:ニトリに行く前に観るべきか?
疲れている人、深夜にお酒を飲みながらツッコミを入れたい人には、最高の癒やし(?)になります。
しかし、真面目なホラー映画を求めている人、家具に愛着を持っている人は、時間の無駄です。 視聴後は、きっと自宅の椅子に座る際、少しだけ優しくなれるでしょう。 あるいは、粗大ゴミに出したくなるか、そのどちらかです。
作品情報

小林 祐太
TV60編集長。脚本構造と映像技術の分析に基づいた『構造批評』を得意とする。ガジェットレビューでは、スペック数値よりも『生活への定着度』を重視し、最低1ヶ月以上の実使用を経た上での評価を徹底している。
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