映画『謝罪の王様』ネタバレなし感想・評価|「土下座」の向こう側に何がある?クドカン×阿部サダヲが描く、謝罪エンターテインメントの最高峰【レビュー】
「ごめんなさい」で世界を救う?架空の職業『謝罪師』黒島譲が、セクハラから国家存亡の危機まで、あらゆるトラブルを謝罪テクニックで解決する。宮藤官九郎脚本の爆笑社会風刺コメディ。
開始15分で「謝罪」の概念が変わる
「謝罪」と聞いて、何を思い浮かべますか? 屈辱? 敗北? この映画の主人公、謝罪師・黒島譲(阿部サダヲ)にとっては違います。 謝罪とは「技術」であり、「アート」であり、そして「最強の武器」なのです。
冒頭から繰り出される謝罪テクニックの数々に、目から鱗が落ちまくります。 「なるほど、そうやって謝れば相手の怒りを逸らせるのか」と、妙に感心してしまう。 もちろんコメディなので誇張されていますが、その根底にある人間心理の洞察は鋭い。 笑いながらも、「これ、明日会社で使えるかも…」とメモを取りたくなる、変な実用性があります。
6つのエピソードが繋がる「快感」
映画はオムニバス形式で進みます。 ヤクザの車に追突してしまった帰国子女、セクハラで訴えられた下着メーカー社員、息子の傷害事件に悩む大物俳優など。 一見バラバラに見えるこれらの依頼が、後半に向けて怒涛の勢いで繋がっていきます。
宮藤官九郎脚本の真骨頂ですね。 「あの時のあのセリフが、ここで効いてくるのか!」 「あの背景にいた人が、実は重要人物だったのか!」 パズルのピースが埋まっていく快感は、ミステリー映画顔負けです。 特に、最初はイライラさせられる岡田将生演じるチャラ男が、物語のキーマンになっていく展開は秀逸でした。
豪華キャストが「全力でふざける」贅沢
阿部サダヲさんは言うまでもなく最高ですが、脇を固めるキャストも豪華すぎます。
| 評価項目 | 評価 |
|---|---|
| 脚本・構成 | 神業 |
| 社会風刺度 | ギリギリ |
| キャストの無駄遣い | 贅沢 |
【解説】 竹野内豊さんが「謝り方がわからないエリート弁護士」を演じているのですが、その不器用さがたまらなく面白い。 イケメンが真顔で変なことをする面白さを、この映画は熟知しています。 そして、高橋克実さんと松雪泰子さんの夫婦役。 大物俳優の謝罪会見という設定で、芸能界のスキャンダルを痛烈に皮肉っています。 「これ、あの事件が元ネタだよね?」とニヤリとできるブラックジョークも満載。 日本の謝罪文化を、ここまでエンタメに昇華させた手腕には脱帽です。
「土下座」を超える究極の謝罪とは?
物語は後半、とんでもないスケールに発展します。 まさかの国家間の外交問題。 架空の国「マンタン王国」の皇太子に無礼を働いてしまい、戦争の危機に。 そこで繰り出される「究極の謝罪」。
詳細は伏せますが、映画館で観た時、笑いすぎて呼吸困難になりかけました。 バカバカしい。本当にバカバカしい。 でも、そのバカバカしさの向こう側に、言葉や文化を超えた「許し」の本質が見えるような気がします(気のせいかもしれませんが)。 「土下座の向こう側」を見たければ、この映画を見るしかありません。
井上真央の「ウザさ」がクセになる
ヒロイン(?)の井上真央さん。 帰国子女で、謝れない女・倉持典子を演じていますが、序盤のウザさは天下一品です。 「Sorryって言ったじゃん!」と逆ギレする姿に、本気でイラッとします。
でも、黒島との関わりの中で、彼女が少しずつ「日本の心」を理解していく(あるいは染まっていく)過程が良い。 黒島との凸凹コンビ感は、見ていて微笑ましいものがあります。 阿部サダヲとの掛け合いのテンポは、もはや漫才の領域。 二人の相性の良さが、映画全体のグルーヴ感を作っています。
結論:日本人の「メンタリティ」を笑い飛ばす傑作
私たちは普段、過剰なほど謝り、謝罪を求めます。 そんな窮屈な日本社会を、「謝罪の王様」は笑い飛ばしてくれます。 「謝るって、そんなに悪いことじゃないかもな」 「許すって、気持ちいいかもな」 見終わった後、少しだけ心が軽くなる映画です。
ただし、エンドロール後のオマケ映像までしっかり見てください。 最後までサービス精神たっぷりのクドカンワールド。 辛いことがあった日、誰かに怒られた日に、処方箋として観てほしい一本です。
作品情報

小林 祐太
TV60編集長。脚本構造と映像技術の分析に基づいた『構造批評』を得意とする。ガジェットレビューでは、スペック数値よりも『生活への定着度』を重視し、最低1ヶ月以上の実使用を経た上での評価を徹底している。
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