映画『カルト』ネタバレなし感想・評価|ホラーの皮を被った「能力者バトル」の傑作【レビュー】
「カルト」ネタバレなし感想・評価。白石晃士監督が放つモキュメンタリー・ホラーの怪作。前半の陰湿な心霊現象から、後半の怒涛の展開へ。「最強の霊能者NEO」が登場した瞬間、世界は変わる。
恐怖映像を見ていたはずが、気づけば拳を握っていた
最初は「またいつものアイドル心霊番組か」と高を括っていました。 あびる優、岩佐真悠子といった実在のタレントが本人役で出演し、インチキ臭い霊能者と共に除霊ロケに行く。 白石晃士監督のお家芸とも言える、うさん臭さとリアリティの狭間を漂う展開。
しかし、ある男が登場した瞬間、この映画はジャンルを変えます。 「ホラー」から「ヒーローもの」へ。 恐怖で縮み上がっていた心臓が、別の意味で高鳴り始める。 「カッコいい…のか?」と戸惑っている間に、気づけば画面に向かって「いけぇ!」と叫びそうになっている自分がいました。
白石晃士ユニバースの「到達点」の一つ
『ノロイ』や『コワすぎ!』シリーズで、フェイクドキュメンタリー(モキュメンタリー)の手法を極めた白石監督。 本作はその手腕がいかんなく発揮されています。 カメラワークの揺れ、ノイズ、わざとらしい演出。 それら全てが、後半の展開への壮大な「フリ」になっています。
「霊体」の表現も独特です。 おどろおどろしい幽霊というよりは、どこか生物的で、得体の知れないクリーチャー感。 それが「物理攻撃が効きそう」な雰囲気を醸し出し、バトル展開への移行をスムーズにしています。
最強霊能者「NEO」という劇薬
この映画を語る上で避けて通れないのが、後半から登場する霊能者・NEO(ネオ)です。 金髪、ホスト風のスーツ、そして態度は最悪。 しかし、その実力は本物。
| 評価項目 | 評価 |
|---|---|
| 脚本 | 構成の妙技に唸る |
| 映像美 | チープさが逆に不気味 |
| キャラ | NEOがすべてを持っていく |
【解説】 これまでのJホラーにおける霊能者は、祈祷したり、数珠を投げたり、あるいは無力に倒されたりする存在でした。 しかしNEOは違います。 「霊を殴る(概念的に)」 「結界を張る(物理的なエフェクト付きで)」 「呪いを科学的に分析する」 彼の言動の一つ一つが、厨二病心を激しく刺激します。 三浦涼介の演技が神懸かっており、「嫌な奴なのに頼もしい」という絶妙なバランスを成立させています。
視聴後の「NEOロス」について
84分という短い上映時間が終わった後、あなたを襲うのは恐怖ではありません。 「もっとNEOを見せてくれ」という渇望です。 スピンオフを作ってくれ、シリーズ化してくれ。 そう願わずにはいられないほど、彼のキャラクターは強烈です。
ホラー映画を見て「元気が出る」という体験は稀有ですが、本作は間違いなくその一角。 見終わった後、不思議と前向きな気持ちになれるのです。 「まあ、何かあったらNEOが何とかしてくれるか」という(存在しない)安心感。
音響効果と「気持ち悪い」演出
白石作品特有の「気持ち悪い音」は健在です。 グチョ、ヌチャ、という粘液質な音や、耳障りなノイズ。 これらが前半の生理的な嫌悪感を煽り、後半のカタルシス(それらが払拭される快感)をより際立たせています。
また、カメラの視点(POV)が効果的に使われており、 「撮影者が見ているもの」=「観客が見ているもの」 という没入感を強制されます。 霊が迫ってくるシーンの臨場感は、低予算ながら一級品です。
多角的な分析:『コワすぎ!』との違い
同じ監督の『コワすぎ!』シリーズと比較すると、本作はより「エンタメ」に振っています。 『コワすぎ!』が工藤ディレクターという「暴力的な一般人」が怪異に立ち向かう狂気を描いているのに対し、 『カルト』は「選ばれし能力者」が怪異を圧倒する爽快感を描いています。
どちらも「理不尽な怪異」vs「人間」の構図ですが、アプローチが真逆。 『コワすぎ!』が泥臭いプロレスなら、『カルト』は洗練された異種格闘技戦。 しかし、底流に流れる「怪異に対する畏怖と、それをねじ伏せたいという人間の業」は共通しています。
結論:ホラーが苦手な少年漫画ファンへ
「幽霊とか無理」と食わず嫌いしている人こそ、観てください。 これは実質『BLEACH』や『呪術廻戦』です(暴論)。 前半20分だけ我慢すれば、あとは極上のエンターテインメントが待っています。
逆に、**「湿っとした情緒ある怪談を楽しみたい人」**にとっては、 後半の展開は「ふざけるな」と怒りたくなるかもしれません。 ここは「除霊エンターテインメント」という新しいジャンルだと思って、割り切って楽しむのが吉です。
「除霊は、物理だ。」 そんな幻聴が聞こえてくる、痛快な一作でした。
作品情報

小林 祐太
TV60編集長。脚本構造と映像技術の分析に基づいた『構造批評』を得意とする。ガジェットレビューでは、スペック数値よりも『生活への定着度』を重視し、最低1ヶ月以上の実使用を経た上での評価を徹底している。
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