HOME/CINEMA/ 2026-02-02

映画『フィッシュストーリー』ネタバレなし感想・評価|売れないパンクバンドの絶叫が、時を超えて地球を救う【レビュー】

「フィッシュストーリー」ネタバレなし感想・評価。伊坂幸太郎×中村義洋。1975年の売れないバンドの曲が、巡り巡って2012年の地球滅亡を救う?バラバラな時系列が一つに繋がる瞬間のカタルシスは必見。

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SCORE
RANKA

60秒で結論買うべき?観るべき?

GOOD

ラストの「繋がり」の爽快感

BAD

前半の展開が少しスローに見えるかも

誰にも届かなかった叫びが、世界を変えるバタフライ・エフェクト

「いい曲なんだけど、早すぎたんだよ」 そう言われて解散していった、1975年のパンクバンド「逆鱗」。 彼らが最後のレコーディングで叩きつけた一曲『FISH STORY』。 無音部分に込められた叫び、意味不明な歌詞。 当時、誰の心にも響かず、レコードはワゴンセールで埃を被った。

しかし。 その曲は死んでいなかった。 1982年、2009年、そして2012年。 時代を超えて、その曲は「誰か」の運命を少しだけ変え、その「誰か」がまた別の「誰か」を救う。 そして最後には――地球に迫る巨大彗星へと繋がっていく。

「風が吹けば桶屋が儲かる」を、壮大なスケールとパンクロックで描いた、奇跡のような法螺話です。

伊坂幸太郎原作の映像化として「正解」

伊坂幸太郎の小説特有の「一見関係ないエピソードが、最後に見事に収束する」構成。 これを映像にするのは至難の業ですが、中村義洋監督は見事にやってのけました。

気弱な大学生、正義の味方になりたいコック、フェリーに乗った女子高生。 バラバラな点と点が、音楽という線で結ばれていく過程は、見ていて鳥肌が立ちます。 「あ、そこがそうなるの!?」という驚きの連続。 パズルが完成する瞬間の快感は、ミステリー映画以上です。

BEYOND THE 60 SECONDSここから先は、深掘りレビュー。
Technical Review

音楽が「主役」として機能している稀有な例

本作において、バンド「逆鱗」が演奏する楽曲『FISH STORY』は、単なるBGMではありません。 物語のエンジンそのものです。

評価項目評価
脚本構成力が神がかっている
映像美各時代の空気感の再現が見事
音楽斉藤和義プロデュースのガチ名曲

【解説】 実際に高良健吾らが演奏し、斉藤和義がプロデュースした楽曲の強度が素晴らしい。 「1975年当時のパンク(セックス・ピストルズ以前)」という設定に説得力を持たせる、粗削りだけど魂を揺さぶるサウンド。 この曲がカッコよくなければ、映画全体の説得力が崩壊します。 しかし、彼らの演奏シーンには、「これを届けたい」という切実な熱量があり、観客(私)は心の中でモッシュを始めざるを得ませんでした。

森山未來という「身体能力お化け」

ネタバレになるので詳しくは言えませんが、2012年のパートで登場する森山未來。 彼の身体能力と演技力が、この映画の「フィクションとしての説得力」を一段階引き上げています。 「正義の味方」という、ともすれば寒くなる役柄を、彼が演じることで「実在するかもしれない」と思わせてしまう。 あのアクションシーンだけでも、チケット代(配信代)の元は取れます。

視聴後の「無駄なことはない」という希望

人生、うまくいかないことだらけです。 努力は報われないし、叫びは誰にも届かない。 「逆鱗」のメンバーもそうでした。 しかし、この映画を見終わった後、こう思えるようになります。 「今のこの苦しみも、いつか誰かを救う何かに繋がっているのかもしれない」

そんな青臭い希望を、斜に構えた評論家(私)にも信じさせてしまう。 それがこの映画の持つパワーです。

多角的な分析:セッション映画としての側面

本作は、異なる時代の人間たちが、時間差で一つの曲を奏でる「セッション映画」とも言えます。 1975年のレコーディング、1982年のカセットテープ、2009年のネット配信。 メディアは変われど、音楽は劣化せずに伝播していく。 芸術の持つ「時間超越性」を、説教臭くなく、エンターテインメントとして描き切った点は高く評価されるべきです。

結論:伏線回収マニアと音楽好きは必修科目

「すべての出来事には意味がある」と信じたい人ロックンロールに魂を売った人。 今すぐ再生ボタンを押してください。 ラストシーンで流れるエンドロールまで含めて、一つの作品です。

逆に、**「リアルなドキュメンタリーが好きで、ご都合主義が許せない人」**には、 「そんな偶然あるわけないだろ」と鼻につくかもしれません。 でも、その「ありえない偶然」を信じるのが、映画という魔法ではないでしょうか。 届くぜ、誰かに。

作品情報

時間112分
視聴難易度
家族向け推奨
配信Amazon Prime
小林 祐太
WRITTEN BY

小林 祐太

TV60編集長。脚本構造と映像技術の分析に基づいた『構造批評』を得意とする。ガジェットレビューでは、スペック数値よりも『生活への定着度』を重視し、最低1ヶ月以上の実使用を経た上での評価を徹底している。

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