HOME/CINEMA/ 2026-01-17

映画『戦慄怪奇ファイル コワすぎ!FILE-01 口裂け女捕獲作戦』ネタバレなし感想・評価|伝説の始まり!バットで怪異を殴る男【レビュー】

映画『戦慄怪奇ファイル コワすぎ!FILE-01 口裂け女捕獲作戦』ネタバレなし感想・評価。Jホラー界の異端児・白石晃士監督が放つ、POVモキュメンタリーの金字塔。口裂け女を「捕獲」しようとする狂気のディレクター・工藤の暴走から目を離すな。

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SCORE
RANKA

60秒で結論買うべき?観るべき?

GOOD

工藤Dという強烈なキャラクターの誕生。怖さと笑いの絶妙なバランス。

BAD

手ブレが激しいので酔う人は注意。工藤Dが暴力的すぎてドン引きするかも。

ホラー映画の常識を「物理的」に破壊する男

「幽霊が出たら逃げる」 「呪われたらお祓いをする」

そんなホラー映画の常識に飽き飽きしていませんか? なら、この男に会うべきです。 工藤仁(くどう じん)。

彼は、逃げません。 カメラマンとアシスタントを引き連れ、怪異の現場に土足で踏み込みます。 そして、あろうことか「捕獲」しようとします。

本作のタイトルを見てください。 『口裂け女捕獲作戦』。 除霊でも供養でもなく、捕獲です。 野生動物のドキュメンタリー番組ではありません。 心霊番組です。

しかし、工藤Dにとって怪異は「狩るべき対象」でしかありません。 この前提が狂っているからこそ、物語は予測不能な方向へと転がり落ちていきます。 恐怖と笑いは紙一重だと言われますが、本作はその境界線を全力疾走で反復横跳びするような作品です。

伝説の都市伝説 vs 最凶のディレクター

ターゲットは、日本で最も有名な妖怪・口裂け女。 現代に蘇った彼女(?)の映像は、正直かなり怖いです。 Jホラー特有のジメッとした恐怖演出、日常の風景に紛れ込む異物感は、さすが白石監督。 コートを着た長身の女が、不自然な速さで走ってくるシーンなどは、生理的な嫌悪感を煽ります。

しかし、工藤Dが登場するとジャンルが変わります。 彼は口裂け女に対して、なんと金属バットで殴りかかります。 「物理攻撃が効くのかよ!」というツッコミは野暮です。 工藤Dの殺意(気合い)が、霊的防御を貫通しているとしか思えません。

「いいか、俺が合図したら車で轢け!」 こんなセリフを吐く主人公、今までいましたか? 怪異よりも人間の方が怖い、いや、人間の方がヤバい。 そう思わせてくれるだけで、この映画には価値があります。

BEYOND THE 60 SECONDSここから先は、深掘りレビュー。
Technical Review

モキュメンタリー(フェイクドキュメンタリー)の到達点

本作は、投稿映像と取材班の記録映像で構成される「モキュメンタリー」形式をとっています。

評価項目評価
リアリティ嘘だと分かっていても怖い
キャラクター工藤、市川、田代のトリオが最高
テンポ71分間、退屈知らず

【解説】 「どうせ作り物でしょ」と斜に構えて見始めると、痛い目を見ます。 映像の粗さ、音声の乱れ、素人のような演技(に見える演出)。 すべてが計算し尽くされています。

特に、アシスタントの市川さん(久保山智夏)の冷めたツッコミと、カメラマン田代(白石監督本人)のビビリっぷりが、工藤Dの狂気を際立たせています。 工藤Dが暴走し、市川さんが呆れ、田代が悲鳴を上げる。 この3人のやり取りを見ているだけで、不思議と実家のような安心感を覚えてしまう……それが「コワすぎ!」の魔力です。

呪いのアイテム「呪物」の扱いが雑すぎる

物語の鍵を握る「呪いの髪の毛」。 普通なら桐箱に入れて厳重に保管するところですが、工藤Dはジップロックに入れたり、その辺に放置したりします。 呪われた投稿者に対しても、「おい、これ持ってみろ」と平気で呪物を渡します。

この「罰当たり感」も本作の魅力。 怪異を敬わない。恐れない。ただのネタとして消費する。 現代のマスメディアの傲慢さを風刺しているようにも見えますが、多分そこまで深く考えていません。 工藤Dが暴れたいだけです。 しかし、その無礼さが逆に怪異を刺激し、事態を悪化させていく様は、ある種のコントのようでもあります。

すべての伝説はここから始まった

本作はシリーズの第1作目。 後に続く壮大な(そして宇宙規模にまで発展する)サーガの序章に過ぎません。

しかし、工藤Dの暴力性、市川さんの不憫さ、そして「運命に抗う」というシリーズ全体のテーマは、すでに確立されています。 ラストシーンの衝撃。 「え、これで終わるの?」という唐突な幕切れも含めて、完璧な第1話です。 解決しないまま終わる消化不良感すらも、次への期待に変えてしまう力業。

結論:混ぜるな危険、出会ったら交通事故

口裂け女という「理不尽な暴力」に対抗できるのは、工藤Dという「理不尽な暴力」だけでした。 毒を以て毒を制す。 ホラー映画を見ていて「もっと反撃しろよ!」とイライラしたことがある人には、特効薬となるでしょう。

ただし、視聴後は副作用として、夜道でマスクをした女性を見ても「工藤Dならどうするかな?」と考えるようになってしまいます。 「俺ならバットでいける」 そんな危険な思考回路を植え付けられる、ある意味で呪いよりタチが悪い映画です。 心してご覧ください。

作品情報

時間71分
視聴難易度低い
家族向け要確認
配信Amazon Prime
小林 祐太
WRITTEN BY

小林 祐太

TV60編集長。脚本構造と映像技術の分析に基づいた『構造批評』を得意とする。ガジェットレビューでは、スペック数値よりも『生活への定着度』を重視し、最低1ヶ月以上の実使用を経た上での評価を徹底している。

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