映画『サイコ・ゴアマン』ネタバレなし感想・評価|全宇宙が震える、最高に愛おしい特撮破壊劇【レビュー】
映画『サイコ・ゴアマン』ネタバレなし感想・評価。残虐宇宙人が、生意気な地球人の少女に絶対服従!?血しぶきと爆笑の向こう側に、まさかの家族愛が見える、奇跡のB級特撮映画。
宇宙最強の破壊神が、小学生のパシリにされる快感
想像してください。 サノスやフリーザのような銀河最強の魔王が、 近所のクソ生意気な小学生女子に「お手」をさせられている姿を。
この映画のプロットは、その一点突破で勝利しています。 笑いすぎて腹筋が崩壊しそうになりました。
かつて地球の子供たちが夢中になった「特撮ヒーロー番組」。 その懐かしい手触りを残しつつ、 中身を「R15指定のミンチ製造機」に入れ替えたような作品です。
バカバカしい? もちろんです。 でも、そのバカバカしさを全力でやり切る姿勢には、ある種の神々しさすら漂っています。
着ぐるみだからこそ出せる、この「味」を噛み締めろ
CG全盛の時代に、あえての「着ぐるみ」。 ゴムの質感、動きにくそうな関節、大げさなアクション。 これらが、安っぽく見えるどころか、 「ああ、俺たちが好きだったのはこれだよ!」というノスタルジーを爆発させます。
監督の「日本の特撮愛」が、画面の端々から溢れ出しているのです。
敵の怪人たちのデザインも秀逸。 どう見ても「戦隊モノの雑魚キャラ」なのに、 やることなすこと残虐非道。 そのギャップが、脳の処理速度を追いつかせません。 (脳味噌が怪人になった人が、普通に会話しているシーンで吹きました)
少女ミミ:映画史上、最も恐ろしい「マスター」
この映画の真の支配者は、破壊神サイコ・ゴアマン(PG)ではありません。 彼を操る宝石を手に入れた少女、ミミです。
彼女の性格の悪さは、筋金入りです。 ワガママで、暴力的で、自分勝手。 宇宙の運命よりも、自分の遊びを優先する。
本来なら嫌われ役になるはずの彼女が、 PGという絶対的な暴力を手に入れたことで、 物語をカオスな方向へとドライブさせていきます。
「名前はサイコ・ゴアマンね!略してPG!」 と勝手に命名し、ドラムを叩かせ、買い出しに行かせる。
その容赦ない「飼い主」っぷりを見ていると、 いつしかPGの方に同情している自分に気づくでしょう。 「頑張れPG、負けるなPG」と。
| キャラクター | 戦闘力 | 狂気度 |
|---|---|---|
| サイコ・ゴアマン | 宇宙最強 | ★★★☆☆ |
| ミミ(少女) | 一般人 | ★★★★★★★ |
| 兄(ルーク) | 一般人 | ★☆☆☆☆ |
【解説】 表を見れば一目瞭然です。 本当に恐ろしいのは、スーパーパワーを持った宇宙人ではありません。 倫理観の欠如した子供です。 ミミの挙動は、ある意味で純粋な「悪」に近い。 彼女とPGの奇妙なバディ関係こそが、この映画の核であり、魅力なのです。
ゴア描写の宴:血の色は絵の具のように鮮やか
タイトルに「ゴア」と入っているだけあって、人体破壊描写は満載です。
首は飛びます。 体は溶けます。 人は脳みそだけの存在に変えられます。
しかし、不思議と陰惨さはありません。 血の色が妙に明るかったり、効果音がコミカルだったりするため、 まるでコントを見ているような感覚で笑えてしまうのです。
「残酷」を通り越して「ポップ」になっている。 これは、監督のバランス感覚の勝利でしょう。 (とはいえ、日曜の朝に家族で観るのはやめてください。お茶の間が凍りつきます)
特撮怪人たちの「人間臭い」会議
個人的に最高だったのが、 PGを倒すために集まった宇宙の怪人たちの会議シーンです。
「銀河評議会」的な組織のメンバーが、 それぞれの事情や政治的な立場を気にして、ウダウダと揉める。 日本のサラリーマン社会の縮図を見ているようで、妙な親近感が湧きます。
見た目は異形なのに、中身は中間管理職。 そのシュールな会話劇は、タランティーノ映画の無駄話にも通じる面白さがあります。
予想外に熱い「家族」の物語
散々ふざけ倒し、人を殺しまくった挙句、 この映画が着地するのは、まさかの「家族愛」です。
嘘だろ? と思いました。 でも、本当なんです。
ミミの家庭は、実は崩壊寸前でした。 無気力な父、ヒステリックな母。 そこにPGという異物が混入することで、 皮肉にも家族の絆が再生されていく。
「家族でキャッチボールをする」というありふれた光景が、 なぜか涙腺を刺激するクライマックス。
B級映画の皮を被った、極上のファミリードラマ(ただし流血あり)。 この脚本の構成力には、脱帽するしかありません。
結論:童心に帰りたい大人たちへの処方箋
『サイコ・ゴアマン』は、 私たちが子供の頃に夢見た「かっこいいこと」と、 大人になって知った「世の中の理不尽さ」を、 ミキサーにかけてブチまけたような傑作です。
細かい理屈なんてどうでもいい。 ただ、目の前の映像に笑い、驚き、そして少しだけホロッとする。 そんなプリミティブな映画体験が、ここにはあります。
疲れている時こそ、観てください。 PGの無愛想な顔と、ミミの邪悪な笑顔が、 あなたの悩みを銀河の彼方へ吹き飛ばしてくれるはずです。
ただし、鑑賞後の合言葉はこれしかありません。 「サイコ・ゴアマン!」
作品情報

小林 祐太
TV60編集長。脚本構造と映像技術の分析に基づいた『構造批評』を得意とする。ガジェットレビューでは、スペック数値よりも『生活への定着度』を重視し、最低1ヶ月以上の実使用を経た上での評価を徹底している。
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