HOME/CINEMA/ 2026-01-12

映画『SISU/シス 不死身の男』ネタバレなし感想・評価|ナチスをミンチにする最強の老兵!言葉不要のバイオレンス【レビュー】

映画『SISU/シス 不死身の男』ネタバレなし感想・評価。第二次大戦末期、ナチス戦車隊が「絶対に死なない」伝説の老兵と遭遇してしまった。北欧フィンランド発、セリフ極少、ゴア描写マシマシの痛快アクション。

0
SCORE
RANKA

60秒で結論買うべき?観るべき?

GOOD

圧倒的な爽快感。おじいちゃんの不死身っぷりがもはやギャグの領域。

BAD

ストーリーに深みはない。痛々しい描写が苦手な人は注意。

ナメてた相手が「殺人マシーン」でした(極北編)

『ジョン・ウィック』や『イコライザー』など、いわゆる「ナメてた相手が殺人マシンだった」系映画の系譜に、とんでもない新人が現れました。

いや、新人ではなく「超ベテラン」です。 舞台は1944年、ナチス撤退直前のフィンランド。 ツルハシ一本で金を掘る、薄汚れた老人アアタミ。

彼がナチスの戦車隊に絡まれるのですが、そこからの展開が早い。 警告も交渉もありません。 ただ、殺る。

ナイフを突き立て、地雷を投げつけ、己の肉体と知恵だけで重装備の軍隊を壊滅させていく。 その姿は、もはやホラー映画の怪人です(ナチス視点では)。

「死なない」ことへの執念が狂気

タイトルの「SISU(シス)」とは、フィンランド語で「折れない心」「不屈の魂」を意味する言葉だそうです。

しかし、本作の主人公が見せるそれは、美しい精神論ではありません。 銃で撃たれても、首を吊られても、地雷を踏んでも死なない。 「死ぬのを拒否している」としか思えない生命力。

傷口を焼いて塞ぐシーンの痛々しさは、スクリーンのこちら側まで焦げ臭さが漂ってきそうなほど。 もはや人間の領域を超えています。 「どうやったらこのジジイは死ぬんだ?」と、敵と一緒に絶望(と爆笑)する映画です。

BEYOND THE 60 SECONDSここから先は、深掘りレビュー。
Technical Review

セリフを捨てた、研ぎ澄まされた演出

この映画、主人公がほとんど喋りません。 これは手抜きではなく、確固たる演出意図です。

評価項目評価
セリフ量ほぼゼロ
暴力描写120点満点
テンポ91分ノンストップ

【解説】 余計な説明ゼリフは一切なし。 老人の過去も、ナチスの将校たちが語る「噂話」だけで処理されます。

「あいつはかつて300人のソ連兵を殺した伝説のコマンドーだ……」 このベタな説明だけで十分。 あとはひたすら、創意工夫を凝らした殺害シーンが続きます。

言葉がない分、アクションの「痛み」と「重み」がダイレクトに伝わってきます。 うめき声と、骨が砕ける音だけが響く静寂。 これぞ「漢(おとこ)」の映画です。

アイデア勝負の「殺人ガジェット」たち

主人公のアアタミは、近代兵器を持っていません。 あるのはツルハシと、拾った武器と、そして「知恵」です。

特に印象的なのは、地雷の使い方。 普通は踏まないように避けるものですが、彼は「投げる」武器として使います。 ナチスの兵士に地雷を投げつけ、爆散させる。 この発想はなかった。

さらに、水中に逃げた際の空気確保の方法。 敵の死体から●●を抜き取って……(自粛)。 グロテスクですが、その生存本能のたくましさに感服します。 「あるものは何でも使う」というサバイバル精神が、バイオレンスを芸術に昇華させています。

「ラップランド戦争」という歴史的背景

単なるアクション映画に見えますが、背景には史実があります。 第二次世界大戦末期、フィンランドとドイツの間で起きた「ラップランド戦争」。 ドイツ軍は撤退する際、焦土作戦を行い、フィンランドの街を焼き払いました。

映画の中で描かれる「捕虜の女性たち」や「焼かれた村」は、この歴史を反映しています。 だからこそ、アアタミの怒りには正当性がある。 彼がナチスを殺せば殺すほど、観客はカタルシスを感じるのです。 単なる暴力ではなく、これは「復讐」であり「解放」の物語なのです。

北欧の大自然と、飛び散る臓器のコントラスト

映像が美しいのも本作の特徴です。 フィンランドの荒涼とした大地、美しい夕焼け。 どこまでも広がる空と、荒々しい岩肌。

そんな絶景の中で、手足が飛び、戦車が爆発します。 このシュールな対比が、B級アクションとしての品格を高めています。 美しい風景画に、真っ赤なペンキをぶちまけたような背徳感。

特に、ラストシーンの乾いたユーモア。 血まみれ泥まみれになりながら、ある「日常的な行動」をとる主人公の姿。 「仕事終わりの一杯」のような清々しさがあり、映画館では拍手が起きたとか起きないとか。 ハードボイルドの極致です。

犬好きも安心(重要)

この手の映画で気になるのが「犬の安否」です。 主人公は愛犬(ウーリという名の可愛いテリア)を連れています。 ナチスは極悪非道です。 「頼む、犬だけは殺さないでくれ……」と祈りながら観る人も多いでしょう。

でも安心してください。 この映画は、犬には優しいです。 (人間には信じられないくらい厳しいですが)

戦火の中でも、アアタミは常に犬を気にかけています。 犬と共に戦場を生き抜く、ロードムービーとしての側面も……あるかもしれません。 犬が生き残る映画は、いい映画です。これは宇宙の真理です。

結論:ストレス社会を生きる全人類へ

嫌な上司がいる? 理不尽な目に遭った? そんな時は『SISU』を観ましょう。

不死身の老人が、理不尽な暴力を、さらに強大な暴力でねじ伏せる。 そのカタルシスは、どんな自己啓発本よりも効きます。 「言葉はいらない。行動で示せ」 そんなアアタミの背中が、明日を生きる活力をくれます。

頭を空っぽにして、ポップコーンを貪り食いながら観る。 これぞ娯楽映画の王道。 ただし、食事中には見ないでください。地雷で人が弾け飛ぶので。

作品情報

時間91分
視聴難易度低い
家族向け要確認
配信Amazon Prime
小林 祐太
WRITTEN BY

小林 祐太

TV60編集長。脚本構造と映像技術の分析に基づいた『構造批評』を得意とする。ガジェットレビューでは、スペック数値よりも『生活への定着度』を重視し、最低1ヶ月以上の実使用を経た上での評価を徹底している。

この記事をシェアする