映画『マリグナント 狂暴な悪夢』ネタバレなし感想・評価|天才ジェームズ・ワンが解き放つ「究極のB級」【レビュー】
映画『マリグナント 狂暴な悪夢』ネタバレなし感想・評価。『ソウ』『死霊館』のジェームズ・ワン監督が、自身のルーツであるGiallo(イタリアン・ホラー)やB級映画への愛を炸裂させた、衝撃のアクション・ホラー。
60秒で結論買うべき?観るべき?
GOOD
後半の「まさかの展開」と、度肝を抜くアクション。カメラワークが変態的。
BAD
前半のホラーパートは少し既視感がある(それもフリだが)。
前半と後半で「ジャンル」が変わる
最初は、よくあるホラー映画だと思っていました。 DV夫、流産、謎の侵入者、幻覚……。 「はいはい、いつものジェームズ・ワンね」と。 高クオリティだけど、想定の範囲内だと。
完全に騙されました。 中盤以降、物語はアクセルをベタ踏みして、誰も予想できない方向へ爆走し始めます。
「えっ、そっち!?」 映画館で思わず声が出そうになりました。 ホラーだと思っていたら、いつの間にか『マトリックス』ばりの超絶アクション映画になっていたのです。 しかも、その設定がB級すぎて、笑っていいのか驚くべきなのか分からない。 「怖い」という感情が、「楽しい」という感情に上書きされる瞬間。 この体験ができるだけで、チケット代の元は取れます。
「ガブリエル」という名の悪魔的発明
殺人鬼「ガブリエル」の正体が判明した瞬間、あなたの脳はバグります。
ネタバレ厳禁なので詳しく書けませんが、そのビジュアルと動きのインパクトは、映画史に残るレベル。 気持ち悪い。でも、かっこいい。 生理的な嫌悪感と、スタントアクションの美しさが融合した、奇跡のキャラクターです。
人間離れした関節の動き。 物理法則を無視したような跳躍。 CGではなく、実際に柔軟性の高いダンサーやスタントマンを使って撮影している部分も多く、その「生々しさ」が不気味さを倍増させています。 「後ろ向きに歩く」という単純な動作が、これほど怖いとは。
監督の「性癖」が詰め込まれた映像美
ジェームズ・ワン監督は、大作『アクアマン』などを手掛ける一方で、根っからのホラーオタクです。
| 評価項目 | 評価 |
|---|---|
| カメラワーク | 真上からの俯瞰ショットが神 |
| 照明 | ダリオ・アルジェント風の赤 |
| 音楽 | 80年代シンセが耳に残る |
【解説】 本作は、彼が「本当に撮りたかったもの」を、ワーナー・ブラザースの金で好き勝手に撮ったプライベートフィルムのような趣があります。 イタリアのジャッロ映画(推理サスペンス)へのオマージュ、80年代ホラーのような電子音楽。 そして、家の中を真上から透視するように移動するカメラワーク。 技術力は超一級品なのに、やってることは「B級の悪ふざけ」。 これぞ、大人の余裕というやつです。 「俺が好きなものを全部詰め込んだから、ついてこれる奴だけついてこい」 そんな監督の自信が画面から溢れ出ています。
圧巻の「留置所大虐殺」シーン
本作のハイライトは、間違いなく後半の留置所でのシーンです。 ここにアクション映画の歴史が変わった瞬間があります。
狭い空間で、多勢に無勢。 しかし、ガブリエルにとってはただの「準備運動」に過ぎません。 女性受刑者たちを次々になぎ倒し、警官隊と対峙する。
銃弾を避け、壁を走り、椅子を投げる。 そのカメラワークと編集のテンポが凄まじい。 『ジョン・ウィック』のようなスタイリッシュさがありつつ、動き自体は『エクソシスト』のように不気味。 「グロテスク」と「クール」が同居する、奇跡のシークエンスです。 このシーンだけで、ご飯3杯はいけます。
伏線回収の気持ちよさ
「前半の既視感」には、すべて意味がありました。 主人公の言動、妹との関係、謎の電話。 すべてのピースがハマった時のカタルシスは凄まじい。
「バカな設定を、大真面目に論理的に説明する」 この姿勢が、本作を単なるバカ映画から「傑作」へと昇華させています。 どんなにトンデモ展開でも、脚本の骨組みがしっかりしているから、観客は振り落とされずに最後まで走り抜けられるのです。
特に、妹との絆を描いたドラマパートも意外と熱い。 ただの怪獣映画ではなく、家族の再生の物語としても(一応)成立させている手腕はさすがです。
アクション映画として観るべきホラー
「怖いのが苦手」という理由で避けるのはもったいない。 これは、恐怖を楽しむというより、驚きと興奮を楽しむアトラクションです。
後半の爽快感(とグロさ)は、ストレス発散に最適。 椅子を投げ、ナイフを投げ、人を投げ。 物理法則を無視したような動きで敵をなぎ倒すガブリエル君に、いつしか声援を送っている自分がいました。
「ホラー映画でガッツポーズをする」 そんな稀有な体験をしたいなら、この映画しかありません。
結論:ネタバレを踏む前に、今すぐ観ろ
この映画の最大の敵は「ネタバレ」です。 あらすじ検索をしてはいけません。 Wikiを見てはいけません。
ただ、「ジェームズ・ワンが狂った映画を撮ったらしい」という情報だけを持って、再生ボタンを押してください。 開始1時間後、あなたは口をポカーンと開けて、画面に釘付けになっているはずです。 「こんな映画、見たことない」 そう言える作品に出会える確率は、そう高くありません。 B級映画の魂を、A級の技術で蘇らせた、現代の怪作。 見終わった後、きっと誰かに「ねえ、マリグナント観た?」と話したくてたまらなくなります。
作品情報

小林 祐太
TV60編集長。脚本構造と映像技術の分析に基づいた『構造批評』を得意とする。ガジェットレビューでは、スペック数値よりも『生活への定着度』を重視し、最低1ヶ月以上の実使用を経た上での評価を徹底している。
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