映画『ハッピー・デス・デイ』ネタバレなし感想・評価|死ぬたびに強くなるビッチ女子大生のループ地獄【レビュー】
映画『ハッピー・デス・デイ』ネタバレなし感想・評価。誕生日の夜に殺され、目が覚めるとまた誕生日の朝。死のタイムループに閉じ込められた女子大生が、犯人を突き止めるために「死んで覚える」ホラーコメディ。
「死にゲー」を実写化したらこうなる
『恋はデジャ・ブ』×『スクリーム』。 タイムループものとスラッシャーホラーを掛け合わせたら、まさかの「青春成長物語」が生まれました。
主人公のツリーは、典型的な「性格の悪いビッチな女子大生」。 最初は見ていてイライラします。 しかし、彼女は殺されまくります。 ベビーマスクの殺人鬼に、刺され、燃やされ、轢かれ。
そして、ループするたびに彼女は学習し、成長し、そして……強くなります。 「どうせ死ぬなら、行動を変えてやる!」 中盤からの彼女の開き直りっぷりは、見ていて痛快そのもの。 怯える被害者ではなく、怒れるファイターへと変貌していく姿に、いつの間にか感情移入させられていました。 最初は「ざまぁみろ」と思っていたのに、最後には「頑張れツリー!」と応援している。 この感情の変化こそが、本作の魔法です。
ホラーなのに、なぜか元気が出る
この映画の素晴らしい点は、明るさです。 死ぬシーンは何度もありますが、悲壮感はありません。
むしろ、失敗を繰り返しながら正解(犯人特定と生存)を探すプロセスは、ゲームのRTA(リアルタイムアタック)を見ているような楽しさがあります。 「あ、そこ行くと死ぬよ」「次は武器を持っていこう」 そんな感覚で、主人公と一緒に推理に参加できます。
特に、中盤の「死に様モンタージュ」。 アップテンポな曲に乗せて、何度も殺され、何度も目覚めるシーンは爆笑必至。 「死」をここまでポジティブに描いたホラー映画があったでしょうか。
伏線の張り方と回収が見事
単なるコメディではありません。ミステリーとしても秀逸です。
| 評価項目 | 評価 |
|---|---|
| 脚本 | 無駄がなくテンポが良い |
| 伏線 | 小さな違和感が全て繋がる |
| 主演女優 | 表情の幅がすごすぎる |
【解説】 ループもの特有の「繰り返しの退屈さ」を回避する編集が見事。 同じ朝の風景が、主人公の心情によって全く違って見える演出も上手い。 1周目では気づかなかった些細なセリフや行動が、2周目、3周目で意味を持ってくる。 「あいつが怪しい」「いや、こっちか?」と、二転三転する犯人探しは最後まで飽きさせません。
そして主演のジェシカ・ロース。 高飛車な女王様から、怯える少女、そして覚悟を決めた戦士まで、くるくると変わる表情が魅力的すぎます。 彼女のコメディエンヌとしての才能が、この映画を何倍も面白くしています。 顔芸のバリエーションだけでも見る価値があります。
意外と泣ける「家族」の話
ただ犯人を探すだけではなく、ループを通して「自分の人生」を見つめ直す物語でもあります。 疎遠だった父親との関係、ルームメイトへの態度、不倫相手との決別。
「もし、今日が人生最後の日だとしたら、私はこのままでいいのか?」 そんな哲学的な問いかけが、ポップな映像の中に隠されています。 だからこそ、ラストシーンの爽やかさが胸に響くのです。 ホラー映画で涙ぐむとは思いませんでした。 ツリーが父親とランチをするシーン。 ここで見せる彼女の涙は、ループ地獄の中で見つけた「本当の自分」の涙なのです。
カーターという最高の癒やし
主人公を支える男子学生、カーターの存在も忘れてはいけません。 彼はループの記憶を持っていませんが、毎回ツリーを信じ、励ましてくれます。 「君ならできる」 彼の一言が、絶望しそうになるツリーの支えになる。 ホラー映画なのに、キュンとする青春ラブコメの要素もしっかり入っています。 「いい奴」の定義を具現化したような彼に、全視聴者が惚れるでしょう。
続編『2U』もセットで観るべし
本作が気に入ったら、続編の『ハッピー・デス・デイ 2U』も必見です。 なんと、ジャンルが「SF」に変わります。 ホラー要素はさらに減り、感動と笑いが増量。 1作目の伏線をさらに回収するという離れ業をやってのけています。
この2作セットでの完成度の高さは、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』級と言っても過言ではありません(言い過ぎかもしれませんが、それくらい面白い)。 ぜひ、週末に2本続けてイッキ見してください。
結論:ホラー初心者への最高の入門書
「グロいのは無理」「怖いのは嫌」 そんな人にこそ、この映画を勧めたい。
怖がらせるためではなく、楽しませるためのホラー。 見終わった後、きっと「明日も頑張ろう」と思えるはずです。 (もちろん、明日殺される予定がなければの話ですが)
カップルで観るもよし、一人で観るもよし。 万人に愛される、B級ホラーコメディの傑作です。 今日という一日を大切にしたくなる、そんな素敵なメッセージを受け取ってください。
作品情報

小林 祐太
TV60編集長。脚本構造と映像技術の分析に基づいた『構造批評』を得意とする。ガジェットレビューでは、スペック数値よりも『生活への定着度』を重視し、最低1ヶ月以上の実使用を経た上での評価を徹底している。
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