映画『ウィリーズ・ワンダーランド』ネタバレなし感想・評価|ニコラス・ケイジが無言で掃除するだけの神映画【レビュー】
映画『ウィリーズ・ワンダーランド』ネタバレなし感想・評価。ニコラス・ケイジが一言も発せず、殺人ロボットをボコボコにして、ひたすら掃除をする。シュールすぎる100分間。
セリフゼロ。あるのは「掃除」と「暴力」のみ
ニコラス・ケイジといえば、借金返済のためにどんな仕事でも引き受けることで有名です。 しかし、まさかここまで「仕事」に徹するとは。
この映画で、彼は一言も喋りません。 「あ」とか「う」とかいう呻き声すらありません。
ただ黙々と、廃墟となった遊園地を掃除する。 そして、襲いかかってくる殺人ロボットを、 トイレ掃除のついでみたいに破壊する。
このシュールすぎる構図だけで、88分を持たせる。 ある意味、現代アートのような映画です。
殺人ロボットたちが可哀想になってくる理不尽な暴力
舞台は、悪霊が取り憑いたアニマトロニクス(機械人形)が巣食う遊園地。 本来なら、人間が一方的に狩られるホラー映画の展開です。
しかし、今回狩られるのはロボットの方でした。 ニコラス・ケイジ演じる主人公(名無し)が、あまりにも強すぎるのです。
モップの柄で殴り、素手で引きちぎり、踏みつける。 ロボットたちが「殺してやる!」と襲いかかっても、 彼は眉ひとつ動かさず、淡々と処理します。 まるで「頑固な汚れ」を落とすかのように。 (途中から、ロボットたちに「逃げて!」と叫びたくなりました)
休憩時間は絶対厳守。エナジードリンクへの異常な執着
この主人公には、奇妙なルーティンがあります。 腕時計のアラームが鳴ると、たとえ戦闘中であっても動きを止め、 必ず休憩に入るのです。
そして、謎のエナジードリンク「パンチ・ポップ」を飲み、 ピンボールで遊ぶ。
この「休憩シーン」が、何度も何度も繰り返されます。 最初は「なんだこれ?」と思いますが、 3回目くらいから、このリズムが心地よくなってくるから不思議です。
「働く時は働き、休む時は休む」 ホワイト企業の鑑のような姿勢。
彼にとって、殺人ロボットとの戦いはあくまで「業務外」のトラブルであり、 本来の目的はあくまで「掃除」なのです。 このブレない姿勢が、いつしかカッコよく見えてくるのです。
| 業務内容 | 達成度 | 使用ツール |
|---|---|---|
| トイレ掃除 | ★★★★★ | ブラシ、洗剤 |
| 床掃除 | ★★★★★ | モップ |
| 害虫駆除 | ★★★★★ | 拳、足、棒 |
【解説】 表の「害虫駆除」には、殺人ロボットの破壊が含まれます。 彼にとっては、ロボットもゴキブリも同じカテゴリーなのでしょう。 特筆すべきは、掃除のクオリティの高さ。 スプレーを吹きかけ、丁寧に拭き上げる所作は、プロの清掃員そのもの。 ニコラス・ケイジの演技プランがどこに向かっていたのか、謎は深まるばかりです。
若者たちの「お約束」な行動と、それを無視する主人公
ホラー映画には、お決まりの若者グループが登場します。 「ここで死ぬんだな」と分かる軽率な行動を繰り返し、 案の定、次々と犠牲になっていく彼ら。
本来なら、主人公が彼らを助け、共に脱出する流れになるはずです。 しかし、ニコラス・ケイジは違います。
彼らが助けを求めても、基本無視。 興味がないのです。
「俺は掃除をしに来たんだ。お前らの事情なんて知らん」 そのドライな対応が、最高に笑えます。
それでも結果的に、彼の暴力が若者を助けることになるのですが、 そこにヒロイズムは一切ありません。 ただの「業務遂行」の結果です。
アニマトロニクスの不気味さと愛嬌
敵となるアニマトロニクスたちのデザインも、B級映画らしくて素晴らしい。 薄汚れた毛並み、ぎこちない動き、そして不気味な歌声。
「ウィリーズ・ワンダーランドへようこそ〜♪」 あの歌が、耳から離れなくなります。
CG全盛の時代に、あえて実体のある着ぐるみを使うことで、 物理的な「重み」と「汚さ」が表現されています。
彼らが破壊され、オイル(血のメタファー)を垂れ流して死ぬ姿には、 哀愁すら漂っています。 (ゴリラ型ロボットとの肉弾戦は、怪獣映画を見ているような迫力でした)
結論:働く全ての人へ贈る、究極の労働讃歌
『ウィリーズ・ワンダーランド』は、 ただのB級アクションホラーではありません。 これは、「労働とは何か」を問う哲学的な作品です(嘘です)。
しかし、ニコラス・ケイジの背中から学べることは多いはずです。 理不尽なトラブル(殺人ロボット)があっても、 文句一つ言わず(本当に言わない)、 与えられたタスク(掃除)を完遂し、 きっちりと休憩を取り、 最後には報酬を受け取って去っていく。
そのプロフェッショナルな姿勢に、私は感動しました。
明日から仕事で理不尽な客や上司に遭遇したら、 心の中でニコラス・ケイジを召喚しましょう。 そして、心のモップで彼らを殴り倒し、 エナジードリンクを飲んで休憩するのです。
スッキリしたい夜に、ぜひ。
作品情報

小林 祐太
TV60編集長。脚本構造と映像技術の分析に基づいた『構造批評』を得意とする。ガジェットレビューでは、スペック数値よりも『生活への定着度』を重視し、最低1ヶ月以上の実使用を経た上での評価を徹底している。
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