映画『プー あくまのくまさん』ネタバレなし感想・評価|著作権切れが生んだ悲劇。ハチミツの代わりに血を啜る森の悪魔【レビュー】
映画『プー あくまのくまさん』ネタバレなし感想・評価。100エーカーの森は地獄と化した。クリストファー・ロビンに捨てられたプーとピグレットが、野生化して人間を狩る。夢を壊されたい人限定。
60秒で結論買うべき?観るべき?
GOOD
「プーさんが人を殺す」というタブーを犯した背徳感
BAD
ただの「マスクを被ったおっさん」に見えてしまい、冷める瞬間がある
ディズニー法務部がアップを始め……られなかった理由
この映画が存在できる理由。 それは、原作小説の著作権が切れてパブリックドメインになったからです。 (※ディズニーのアニメ版の権利はまだ切れていません)
「権利が切れた瞬間、これかよ!」 世界中からそんなツッコミが殺到しました。
誰からも愛される黄色い熊さんを、 残忍なシリアルキラーに仕立て上げる。 その悪趣味な発想力には、ある種の感動すら覚えます。 「やるなら徹底的にやってやる」という、作り手の歪んだ情熱がほとばしっています。
森の仲間たちが「野生化」した末路
物語の設定はこうです。 クリストファー・ロビンが大学進学のために森を去った。 残されたプーたちは、飢えと寒さに苦しみ、 やがて野生の本能を取り戻し、友を食い(!)、人間を恨むようになった。
重い。 設定がガチすぎて引きます。
特に、イーヨー(ロバ)の運命については、 口にするのも憚られるほど残酷です。 「あんなに仲良しだったのに……」 子供の頃の思い出が、音を立てて崩れ去っていきます。
犯人は「着ぐるみを着たおっさん」にしか見えない問題
肝心のプーさんのビジュアルですが、 これが非常に評価の分かれるところです。
予算の都合なのか、あえての演出なのか、 「ゴムマスクを被った、小太りのおっさん」 にしか見えません。
表情は動かない。 体型は人間そのもの(特に指先)。 服は作業着のようなオーバーオール。
「これ、実は人間が変装してるオチなんじゃないの?」 と疑いながら観ていましたが、 どうやら作中では「本物の怪物」として扱われているようです。
この「着ぐるみ感」を、 「不気味だ」と捉えるか、 「安っぽい」と捉えるかで、評価は180度変わります。
| キャラクター | 武器 | 残虐性 |
|---|---|---|
| プー | ハンマー、車 | ★★★★★ |
| ピグレット | チェーン | ★★★★☆ |
| クリストファー | 思い出補正 | 無力 |
【解説】 クリストファー・ロビンも登場しますが、 感動の再会とはなりません。 「プー、僕だよ!」と呼びかける彼に対し、 プーは無慈悲な暴力を振るいます。 「もうお前の知っているプーじゃないんだよ」 という絶望感が、この映画の唯一の文学的なポイントかもしれません。
スラッシャー映画としては「普通」
キャラクターのインパクトは絶大ですが、 映画の中身(殺害シーンなど)は、 往年の『13日の金曜日』や『ハロウィン』を模倣した、 ごくごく普通のB級スラッシャーです。
森に迷い込んだパリピな若者たちが、 一人また一人と殺されていく。 お色気シーンがあり、悲鳴があり、血しぶきがある。
もしプーさんの皮を被っていなければ、 誰の記憶にも残らない凡作だったでしょう。 「ガワ」を変えるだけで、ここまで話題になれる。 IP(知的財産)の力の凄さを思い知らされます。
結論:ハチミツを見る目が変わる
『プー あくまのくまさん』は、 「著作権切れ」という祭りに乗っかった、一発芸のような映画です。
怖いもの見たさで観るのはアリですが、 過度な期待は禁物です。
ただ、この映画を観た後、 スーパーでハチミツの瓶を見た時に、 ふと血の味を連想してしまうかもしれません。
そして、ディズニーランドでプーさんのハニーハントに乗った時、 「こいつら、いつか裏切るんじゃないか……」 と疑心暗鬼になること請け合いです。
夢の国へのパスポートを破り捨てたい方には、 自信を持っておすすめできる一本です。
作品情報

小林 祐太
TV60編集長。脚本構造と映像技術の分析に基づいた『構造批評』を得意とする。ガジェットレビューでは、スペック数値よりも『生活への定着度』を重視し、最低1ヶ月以上の実使用を経た上での評価を徹底している。
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