映画『WOOD JOB!(ウッジョブ)~神去なあなあ日常~』ネタバレなし感想・評価|携帯圏外の山奥で、都会っ子が林業デビュー!?【レビュー】
映画『WOOD JOB!』ネタバレなし感想・評価。三浦しをんの小説を矢口史靖監督が映画化。大学受験に失敗した都会の青年が、パンフレットの美女につられて林業の世界へ。大自然の中で繰り広げられる、笑いと涙とふんどしの青春物語。
100年後のために木を植える、究極のスローライフ
「パンフレットの表紙の女の子が可愛かったから」 そんな不純な動機で、携帯の電波も届かないド田舎「神去村(かむさりむら)」へやってきた主人公。 そこで待っていたのは、コンビニなし、娯楽なし、そして荒々しすぎる林業の現場でした。
都会の軟弱な若者が、田舎の厳しい自然と人々に揉まれて成長していく。 プロット自体は古典的ですが、矢口史靖監督の手にかかると、これが魔法のように面白い。
チェーンソーの重さ、杉の木の香り、ヒルに血を吸われる恐怖。 画面を通して、森の「湿度」まで伝わってくるような臨場感があります。
そして何より、「林業」という仕事の尊さ。 彼らが今日植えた木が家になるのは、100年後。自分は生きていない未来のために汗を流す。 その気の遠くなるような時間の流れ(=なあなあ)に触れた時、主人公だけでなく、私たちの心の中にある「都会の毒」も浄化されていきます。
伊藤英明の「雄(オス)」としての説得力
本作のMVPは、間違いなく伊藤英明です。 彼が演じる「ヨキ」という男は、野生動物そのもの。 粗野で乱暴で、でも山への敬意は誰よりも深い。
タンクトップ姿でチェーンソーを振り回す姿は、現代日本とは思えない野性味に溢れています。 (『海猿』の爽やかさはどこへ行ったのか。完全に山猿です。)
対する主演の染谷将太の「やる気のない目」も最高です。 この二人の師弟関係(というか飼い主とペット?)が、少しずつ信頼関係に変わっていく過程は、言葉少なだからこそ胸に響きます。
役者の演技と演出について
長澤まさみのノーメイクに近い(と思われる)田舎娘役も新鮮です。 バイクを乗り回し、男勝りな口調で主人公を叱責する姿には、新しい魅力が開花しています。
そして、村の人々を演じる脇役たち。 彼らが本当に「そこで生活している」ようにしか見えない。 このリアリティが、ファンタジー寸前のクライマックス(神事)をしっかりと地面に繋ぎ止めています。
| 評価項目 | 評価 |
|---|---|
| 脚本 | 無駄がなく完璧 |
| 映像美 | 緑が目に優しい |
| テンポ | 心地よいリズム |
【解説】 林業のシーンは、実際に俳優たちが訓練を受けて演じているそうで、その迫力はドキュメンタリー並みです。 巨木が倒れる瞬間の地響きや、高所での枝打ちの恐怖。 CGでは出せない「重み」が画面に定着しています。
視聴後の「後遺症」について
無性に「木」に触りたくなります。 そして、自分が使っている割り箸やティッシュ一枚にも、誰かの100年の想いが詰まっているかもしれないと、少しだけ感謝したくなります。
あと、ふんどしを締めたくなるかもしれません(男性限定)。 ラストのお祭りのシーンは、日本映画史に残る「男の尻」名場面です。
音響効果や美術について:神去村の音風景
風が木々を揺らす音、鳥の声、チェーンソーの爆音、そして祭りの太鼓。 音響設計が素晴らしく、目を閉じると森の中にいるような錯覚に陥ります。 特に、クライマックスの「木落とし」のシーンの音は圧巻。 映画館で見たかった……と後悔するレベルの迫力です。
多角的な分析:地方創生映画の最高峰
「田舎は素晴らしい」と手放しで礼賛するのではなく、閉鎖的な人間関係や不便さもしっかりと描いています。 それでも、そこで生きる人々の「誇り」を描くことで、結果的に最強の「地方創生PR映画」になっています。
この映画を見て、実際に林業を志した若者が増えたという話も聞きますが、納得です。 「カッコいい」の定義を、年収やステータスから、「100年後の未来を作ること」へと書き換えてくれる力作です。
結論:疲れた現代人のための「森林浴」ムービー
仕事に追われ、何のために生きているのか分からなくなった時。 この映画を見てください。 深呼吸ができるようになります。
ただし、虫が死ぬほど嫌いな人は、薄目で見るシーンがいくつかあります。 それもまた、自然の一部だと思って諦めてください。 見終わった後の爽快感は、保証します。
作品情報

小林 祐太
TV60編集長。脚本構造と映像技術の分析に基づいた『構造批評』を得意とする。ガジェットレビューでは、スペック数値よりも『生活への定着度』を重視し、最低1ヶ月以上の実使用を経た上での評価を徹底している。
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