映画『武器人間』ネタバレなし感想・評価|脳みそをプロペラで挽肉にされる快感【レビュー】
映画『武器人間』ネタバレなし感想・評価。ナチス×死体×機械=ロマン。ストーリーなんてどうでもいい。ただひたすらに異形のクリーチャーを愛でる、狂気の展覧会へようこそ。
IQを2まで下げて楽しむ、悪趣味な大人の工場見学
冒頭から言っておきます。 高尚なストーリーや、感動的な人間ドラマを期待してはいけません。
この映画にあるのは、「死体に機械をくっつけたらカッコよくね?」という、 小学生男子が授業中にノートの隅に描くような妄想だけです。
しかし、その妄想の解像度が異常に高い。
錆びついた鉄の質感、油の臭い、そして肉が腐る音。 それらが画面越しに伝わってきて、生理的な嫌悪感と共に、 謎の興奮が脳内物質として分泌されます。 (正直、プロペラ人間に襲われたいとすら思いました)
倫理観? ああ、あそこのゴミ箱に捨てておきましたよ
舞台は第二次世界大戦末期。 ソ連軍の偵察部隊が迷い込んだのは、狂気の科学者が支配する地下研究所。 そこで彼らが出会うのは、歴史の教科書には載っていない「兵器」たちです。
頭がプロペラになっている「プロペラ人間」。 両手がカマになっている「カマ人間」。 もはや人間の原型を留めていない「モスキート(蚊)人間」。
これらのデザインが、CGではなく、ほぼ着ぐるみと特殊メイクで作られていることに感動します。
CGのツルッとした嘘くささはありません。 そこに「物質」として存在する重み。 作り手の、「これが俺の考えた最強の兵士だ!」という熱量が、 倫理観というブレーキを完全に破壊しています。
狂気の発明品カタログ:機能性ゼロ、ロマン全振り
この映画の真の主役は、間違いなくクリーチャーたちです。 彼らのデザインは、実用性を完全に無視しています。
「頭にプロペラつけて、どうやって前を見るんだ?」 「そのドリル、自分に刺さってないか?」 そんな野暮なツッコミは禁止です。 カッコよければ、それでいいのです。
| クリーチャー名 | デザイン狂気度 | 実用性 |
|---|---|---|
| プロペラヘッド | ★★★★★ | ☆☆☆☆☆ |
| モスキート | ★★★★☆ | ★☆☆☆☆ |
| ウォールゾンビ | ★★★☆☆ | ★★☆☆☆ |
【解説】 特にプロペラヘッドの登場シーンは、映画史に残る「出オチ」です。 狭い通路でプロペラを回しながら突進してくる。 壁にガリガリ当たって火花が散っている。 「いや、お前が一番動きにくそうじゃん!」と爆笑しながら、 その圧倒的なビジュアルインパクトにひれ伏すしかありません。 機能美ではなく、狂気美。 これぞB級映画の真骨頂です。
POV(主観映像)がもたらす、最悪の臨場感と画面酔い
この映画は、部隊に同行したカメラマンが撮影したフィルム、という設定のPOV方式で進みます。 これがまた、クセ者です。
狭い通路を逃げ惑うシーンでは、カメラが激しく揺れます。 何が映っているのか分からないレベルで揺れます。
しかし、この荒い映像が、閉塞感とパニックを煽るのも事実。
目の前で仲間が改造人間に引き裂かれる惨劇を、 「自分自身の目」で目撃させられる不快感。 映画を観ているというより、 お化け屋敷に無理やり放り込まれたような感覚に近いです。
画質が少し悪いことで、特殊メイクのアラが隠れ、リアリティが増すという計算も見えます。 まあ、計算というよりは、予算の都合かもしれませんが。
博士の演説が長すぎる問題について
後半、この狂った兵器を作ったヴィクター博士が登場します。 彼は自分の「作品」について、嬉々として語ります。
「共産主義と社会主義を融合させるように、人間と機械を融合させたのだ!」 ……はいはい、分かりました。 (正直、博士の話が長すぎて少し眠くなりました)
B級映画あるあるですが、 狂人は自分の理論を語りたがるものです。 でも、観客が求めているのは博士の思想ではなく、 次にどんな変な改造人間が出てくるか、それだけです。
このテンポの悪さが、評価を少し下げざるを得ない要因です。 ただ、博士の顔芸と、嬉しそうな態度は憎めません。 本当に楽しそうで何よりです。
音響効果:錆びた鉄と悲鳴のシンフォニー
BGMはほとんどありません。 聞こえてくるのは、機械の駆動音、蒸気の噴出音、 そして、改造された人間たちのうめき声。
この「音」の演出が、地味に素晴らしい。
特に、プロペラが回る「ブゥゥン……」という重低音。 あれが近づいてくる恐怖は、ジョーズのテーマ曲並みに心臓に悪いです。
また、切断音や粉砕音も妙にリアルで、 食事中に観ることは絶対におすすめしません。
結論:悪夢とロマンの交差点で事故に遭いたい人へ
『武器人間』は、万人受けする映画ではありません。
デートで観たら、相手の趣味を疑われるでしょう。 ストーリー重視の人が観たら、開始30分で怒り出すかもしれません。
しかし、 「スチームパンクが好き」 「異形の怪物が好き」 「理屈よりも勢いを愛している」 そんなニッチな嗜好を持つあなたにとって、 この映画は、宝箱のような輝きを放つはずです。
脳みそを空っぽにして、 目の前に広がる悪趣味なワンダーランドに身を委ねてください。
観終わった後、 扇風機を見る目が少し変わるかもしれません。
作品情報

小林 祐太
TV60編集長。脚本構造と映像技術の分析に基づいた『構造批評』を得意とする。ガジェットレビューでは、スペック数値よりも『生活への定着度』を重視し、最低1ヶ月以上の実使用を経た上での評価を徹底している。
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