映画『バード・デミック』ネタバレなし感想・評価|GIF画像の鳥が襲ってくる。映画制作の常識が崩壊する100分【レビュー】
映画『バード・デミック』ネタバレなし感想・評価。映画史上最低のクオリティと名高い怪作。背景に貼り付けただけの鳥、合わない音声、虚無のような会話。これは映画ではない、事故映像だ。
ヒッチコックが墓の中で激怒するレベル
アルフレッド・ヒッチコック監督の傑作『鳥』をご存知でしょうか? この『バード・デミック』は、その名作へのオマージュを自称しています。
しかし、これはオマージュではありません。 テロです。 映画という芸術に対する、自爆テロです。
開始45分間、何も起こりません。 主人公(ただの一般人)が、仕事をして、デートをして、ドライブをする。 その映像が延々と流れます。 しかも、音声バランスが崩壊しており、 風の音がうるさすぎてセリフが聞こえなかったり、 突然無音になったりします。
「いつ鳥が出てくるんだ……」 観客の精神が限界に達したその時、 ついに奴らが現れます。
GIFアニメの鳥が、画面に「貼られている」
空を埋め尽くす鳥の大群。 しかし、それらは実写でも、精巧なCGでもありません。
インターネットの黎明期に見かけたような、 粗いGIFアニメの鳥が、背景映像の上に「ペタッ」と貼り付けられているのです。
羽ばたきもしない。 遠近感もない。 ただ、同じポーズの鳥が、コピペで増殖している。
そして、その鳥が人間に向かって急降下し、 「ドカーン!」と爆発します。
はい、爆発します。 鳥が。 なぜ? 理由はありません。 監督が「爆発させたい」と思ったからでしょう。
針金ハンガーで応戦する人類
鳥の襲撃を受けた主人公たちが手にした武器。 それは、銃でも火炎放射器でもありません。
針金ハンガーです。
駐車場で、いい大人が針金ハンガーを振り回し、 虚空(GIF画像の鳥)に向かって「あっち行け!」と叫ぶ。
このシーンのシュールさは、言葉では表現しきれません。 役者さんたちの心中を察すると、涙が止まりません。 「俺は一体、何をしているんだろう?」 そんな虚無感が、画面を通して伝わってきます。
| 項目 | クオリティ | 備考 |
|---|---|---|
| VFX(視覚効果) | 測定不能(マイナス) | ペイントソフト以下 |
| 音響(整音) | 放送事故レベル | 突然の爆音に注意 |
| 脚本 | 虚無 | 前半45分はカット可 |
【解説】 この映画のすごいところは、 「環境問題への警鐘」という崇高なテーマを掲げていることです。 地球温暖化のせいで鳥が狂暴化した、という設定らしいのです。 作中でも、やたらと「ハイブリッド車はいいぞ」「ソーラーパネルはいいぞ」 というセリフが出てきます。 エコロジーを説く前に、フィルムの無駄遣いをやめていただきたい。
拍手の音さえフリー素材
劇中、会社の会議で拍手が起こるシーンがあります。 しかし、役者たちは手を叩いているのに、 聞こえてくるのは「パチパチパチ……」という、明らかに別録りのチープな効果音。
しかも、手の動きと音が全く合っていません。 さらに言えば、その音がループ再生されています。
ここまでくると、 「わざとやっているのか?」 「高度なギャグなのか?」 と疑いたくなりますが、監督は至って大真面目だそうです。 その純粋さが、一番の恐怖です。
「移動シーン」という名の拷問
この映画のテンポは、牛歩戦術より遅いです。
主人公が車に乗る。 エンジンをかける。 バックで駐車場を出る。 道路に出る。 走る。 信号で止まる。
これらを、一切カットなしで見せられます。 「リアリティの追求」ではありません。 単に編集ができないのか、尺が足りなかったのか。
観客は、見知らぬ他人のドライブを延々と見せられることになります。 この虚無の時間こそが、 鳥の襲撃よりも恐ろしい「精神攻撃」なのです。
結論:自分にも映画が撮れると勇気をもらえる
『バード・デミック』は、 映画史における「特異点」です。
ここまで酷いものが、世に出て、商品として流通し、 そして一部のカルト的なファン(私含む)に愛されている。 その事実が、人々に希望を与えます。
「あ、こんなのでも映画って名乗っていいんだ」
もしあなたが、何か創作活動をしていて、 自分の才能に絶望しそうになったら、 この映画を観てください。
「俺の方がマシだ」 確実にそう思えます。 究極の自己肯定感向上ムービー。 それが『バード・デミック』の正体です。
作品情報

小林 祐太
TV60編集長。脚本構造と映像技術の分析に基づいた『構造批評』を得意とする。ガジェットレビューでは、スペック数値よりも『生活への定着度』を重視し、最低1ヶ月以上の実使用を経た上での評価を徹底している。
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