映画『東京残酷警察』ネタバレなし感想・評価|血管切れそう!人体改造と血しぶきのサイバーパンク・ナイトメア【レビュー】
映画『東京残酷警察』ネタバレなし感想・評価。西村喜廣監督が描く、近未来の東京。肉体改造された「エンジニア」と警察の血で血を洗う戦い。特殊メイクの限界を超えた、グロテスク・サイバーパンク。
60秒で結論買うべき?観るべき?
GOOD
圧倒的な世界観とビジュアルショック。しいなえいひの冷徹な美しさ。
BAD
ストーリーが難解で置いてけぼりになる。グロ描写がトゥーマッチで胃もたれする。
東京は「血の海」に沈みました
『ブレードランナー』のようなサイバーパンクな未来都市? いいえ、ここはもっと悪趣味で、もっと粘着質な「東京」です。
民営化された警察。 肉体を武器に変えるミュータント「エンジニア」。 街の至るところで噴水のように撒き散らされる血液。
開始数分で理解できます。 「この映画に、常識や倫理を求めてはいけない」と。 西村喜廣監督が脳内の悪夢をそのまま出力したかのような、極彩色の地獄めぐり。 美しくもグロテスクなそのビジュアルは、一度見たら網膜に焼き付いて離れません。
特殊メイクの「狂気」を見る
本作の最大の特徴は、CGに頼りすぎない「特殊造型」の凄まじさです。 西村監督は、日本を代表する特殊メイクアップアーティスト。 本作は、彼の実力が遺憾なく(というか過剰に)発揮されたショーケースです。
体から日本刀が生える。 下半身が巨大な顎(あご)になる。 切断された断面から、さらなる異形が飛び出す。
「どうやったらそんなこと思いつくの?」と聞きたくなるようなクリーチャーデザインの数々。 それらが、アナログな質感を持って動く生理的な嫌悪感と興奮。 CGでは出せない「物体の重み」と「ヌメリ」が、恐怖を倍増させます。
しいなえいひという「凶器」
主人公・ルカを演じるのは、モデル出身のしいなえいひ。 『オーディション』での怪演も記憶に新しい彼女ですが、本作での存在感は神がかっています。
| 評価項目 | 評価 |
|---|---|
| ルカの美貌 | 血飛沫が似合いすぎる |
| アクション | 無機質で容赦がない |
| 衣装 | ラバー素材のフェティシズム |
【解説】 彼女が日本刀を構えるだけで、空気が凍りつきます。 無表情でエンジニアの手足を切り落とし、返り血を浴びても眉一つ動かさない。 その姿は、人間というより美しいドールのよう。
過激な残酷描写の中で、彼女の凛とした美しさだけが、唯一の「秩序」として機能しています。 もし主演が彼女でなければ、この映画は単なる汚いスプラッターで終わっていたかもしれません。 彼女の存在が、作品を「アート」の領域まで引き上げています。
広告という名の「社会風刺」
映画の合間に挟まる、架空の「テレビCM」も見どころの一つです。 『ロボコップ』や『スターシップ・トゥルーパーズ』へのオマージュを感じさせる、ブラックユーモア満載のCMたち。
「リストカットも可愛く! ファッション・リストカッター」 「警察民営化で安心の未来!」
狂った世界観を補強するこれらのCMは、現代社会への痛烈な皮肉……になっているのか、単なる悪ふざけなのか。 判断は難しいですが、本編の惨劇の合間に挟まることで、世界の「狂いっぷり」をより強調する効果を生んでいます。 笑っていいのか分からない、乾いた狂気がそこにあります。
板尾創路の「不気味さ」
キーマンとなる謎の男を演じるのは、板尾創路。 彼の持つ独特の「何を考えているか分からない」雰囲気が、本作の不穏さを加速させます。
多くを語らず、ただそこにいるだけで怖い。 コミカルな演技は封印し、冷徹な狂気を漂わせる彼と、しいなえいひの対峙シーンは、アクションとは違った緊張感があります。 「芸人・板尾創路」ではなく「怪優・板尾創路」の真髄が見られます。
ラスト20分の「過剰摂取」
終盤、物語は暴走します。 「もういい、もうお腹いっぱいだ」と観客が思っても、監督は止まりません。 これでもかと繰り出される人体破壊、融合、変異。 血の量は致死量を超え、画面が赤一色に染まります。
ストーリーの整合性? そんなものは血の海に流されました。 ただただ、圧倒的なビジュアルショックの波状攻撃に耐える時間。 それはある種のトランス状態を誘発します。 「訳が分からないけど、なんか凄いものを見た」 視聴後、呆然としながらそう呟くことになるでしょう。
結論:悪夢を観たい夜に
『東京残酷警察』は、映画というより「見世物小屋」に近いです。 ストーリーを楽しもうとしてはいけません。 西村喜廣という才能が作り出した、グロテスクなオブジェと、血の噴水を鑑賞するアトラクションです。
カップルで観るのは絶対にやめましょう。 夕食前も避けてください。 一人で、部屋を暗くして、世界の終わりのような気分に浸りたい時。 そんな特殊な夜にだけ、この映画は輝きます。 ただし、鑑賞後の精神的・生理的なダメージについては、一切責任を負いません。
作品情報

小林 祐太
TV60編集長。脚本構造と映像技術の分析に基づいた『構造批評』を得意とする。ガジェットレビューでは、スペック数値よりも『生活への定着度』を重視し、最低1ヶ月以上の実使用を経た上での評価を徹底している。
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