映画『Mr.タスク』ネタバレなし感想・評価|人間セイウチ化計画という名の悪夢【レビュー】
映画『Mr.タスク』ネタバレなし感想・評価。人間をセイウチに改造したい狂気の老人。B級ホラーの皮を被った、精神的トラウマ製造機。ジョニー・デップの怪演も見逃せない。
60秒で結論買うべき?観るべき?
GOOD
一度見たら死ぬまで忘れられないインパクトと不快感
BAD
不快すぎて、二度と観たくないし、他人にも勧めづらい
検索してはいけない言葉を、映像化してしまった事故物件
この映画を観る前にお伝えしたいことがあります。
もしあなたが、セイウチに対して「可愛い」というイメージを持っているなら、 今すぐ回れ右をしてください。 この映画を観終わった後、 水族館のセイウチコーナーの前で、嘔吐することになるからです。
「人間をセイウチに改造する」。 たったそれだけのワンアイデア。 しかし、その映像化の破壊力は、核弾頭並みです。
怖くない、面白くない、ただただ「気持ち悪い」。 でも、なぜか目が離せない。 これは映画鑑賞ではありません。 交通事故の現場を、野次馬根性で覗き込んでしまう心理実験です。
冒頭の軽薄なポッドキャスターへの制裁としては重すぎる
主人公は、他人の不幸を笑い物にするポッドキャスター。 正直、かなり嫌な奴です。 「こいつ、痛い目見ればいいのに」 観客の誰もがそう思うでしょう。
しかし、監督のケヴィン・スミスが用意した「痛い目」は、 私たちの想像を遥かに超えていました。
拉致され、足を切断され、皮膚を縫い合わされ……。 徐々に、しかし確実に、人間としての尊厳を奪われていくプロセス。 「因果応報」という言葉で片付けるには、あまりにも残酷すぎます。 (途中から、主人公への嫌悪感が同情を通り越し、虚無感に変わりました)
狂気的老人ハワード・ハウの歪んだ「愛」
この映画の元凶、ハワード・ハウ老人。 彼を演じるマイケル・パークスの演技が、不気味なほど素晴らしい。
知性的で、上品で、語り口は穏やか。 紅茶を飲みながら、昔話を語る姿は、ただの好々爺に見えます。 しかし、その瞳の奥には、底なしの狂気が渦巻いている。
彼にとって、人間をセイウチにすることは「拷問」ではありません。 彼なりの「救済」であり、「芸術」であり、そして「愛」なのです。
この「話が通じない感」が、恐怖を倍増させます。 チェーンソーを持った殺人鬼よりも、 理路整然と狂った持論を展開する老人の方が、よほど怖い。
| キャラクター | 狂気度 | セイウチ愛 |
|---|---|---|
| ハワード老人 | ★★★★★ | ★★★★★ |
| ギー・ラポワンテ | ★★★★☆ | ☆☆☆☆☆ |
| 主人公 | ★☆☆☆☆ | 拒絶反応MAX |
【解説】 表にある「ギー・ラポワンテ」という探偵。 実は、あのジョニー・デップが特殊メイクで演じています。 (クレジットを見るまで気づかない人も多いでしょう) 彼の演技もまた、作品の狂気を加速させています。 シリアスな捜査パートかと思いきや、突然始まるコントのような掛け合い。 緊張と緩和のバランスが完全に壊れていて、観ているこちらの情緒がおかしくなります。
セイウチ人間のビジュアル:生理的嫌悪感の極北
そして訪れる、運命の「完成披露」。 改造された主人公の姿が画面に映し出された瞬間、 私は言葉を失いました。
作り物だと分かっているのに。 着ぐるみだと分かっているのに。 脳が「直視するな」と警告信号を出してくるのです。
人間の皮膚をつぎはぎにして作られた、ブヨブヨの肉塊。 そこから突き出る、哀れな牙。 そして、かつて人間だった者の瞳が、絶望に濡れてこちらを見ている。
このビジュアルデザインを担当した人間は、 何かしらのカウンセリングを受けるべきです。 グロテスクの中に、どこか悲哀を感じさせる造形。 それがまた、神経を逆撫でするのです。
クライマックスの「戦い」:バカバカしさと悲劇の融合
クライマックスで繰り広げられる、 セイウチvsセイウチ(?)の戦い。 文章で書くとコメディにしか見えませんが、 映像で見ると、これが奇妙なほど悲しい。
人間性を完全に剥奪され、本能だけで動く獣に成り下がった主人公。 その姿を見て、私たちは笑うべきなのか、泣くべきなのか。 感情の置き場所が見つからないまま、物語は幕を閉じます。
そして、あのラストシーン。 あれを「ハッピーエンド」と呼ぶか、「バッドエンド」と呼ぶか。 それは、観客の倫理観に委ねられています。 (私は、あれこそが最大の地獄だと思いました)
結論:好奇心は猫をも殺すが、人間をセイウチにする
『Mr.タスク』は、決して「面白い映画」ではありません。 むしろ、「胸糞悪い映画」の代表格です。
しかし、一度観たら死ぬまで忘れられないという点において、 この映画は強烈なパワーを持っています。
友人に「何かすごい映画ない?」と聞かれた時、 この映画を勧めるのはやめておきましょう。 確実に縁を切られます。
それでも、怖いもの見たさで再生ボタンを押そうとしているあなた。 止めはしません。 ただし、覚悟してください。
あなたの脳裏に焼き付くのは、 セイウチの鳴き声と、人間の尊厳が肉塊に変わる音です。
鑑賞後の食欲減退は、ダイエットに効果的かもしれませんね。
作品情報

小林 祐太
TV60編集長。脚本構造と映像技術の分析に基づいた『構造批評』を得意とする。ガジェットレビューでは、スペック数値よりも『生活への定着度』を重視し、最低1ヶ月以上の実使用を経た上での評価を徹底している。
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