HOME/CINEMA/DRAMA/ 2025-12-20

Netflix『グラス・ハート』

佐藤健の本気に殺される。画面から熱風が吹いてくる、狂気と感動の音楽ドラマ。

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SCORE
RANKA

60秒で結論買うべき?観るべき?

GOOD

嘘のない演奏シーンと、役者たちの魂の削り合い

BAD

見終わった後、無性に楽器が欲しくなる(財布に危険)

舐めててすみませんでした

正直、最初は斜に構えていました。 「イケメン俳優が集まってバンドごっこ? はいはい、目の保養ね」と。 開始10分で、その腐った性根を叩き直されました。 ごめんなさい。私が間違っていました。 土下座して謝ります。

これは「俳優が楽器を弾いているドラマ」ではありません。 「ミュージシャンが芝居をしているドキュメンタリー」と錯覚するほどの熱量。 画面から飛び散る汗、弦が切れる音、スティックが折れる衝撃。 それらすべてが「本物」なのです。 (佐藤健さん、あなた一体いつ寝てるんですか?)

深夜に見るんじゃなかった

何気なく再生ボタンを押したのが運の尽き。 気づけば朝を迎えていました。 ストーリーの面白さもさることながら、ライブシーンの「圧」が凄すぎて、アドレナリンが出っ放しになるのです。

特に第○話の初ライブシーン。 鳥肌が立ちすぎて、皮膚が痛くなりました。 深夜のリビングで一人、拳を握りしめて涙を流すおっさん(私)。 客観的に見れば地獄絵図ですが、主観的には天国でした。 このドラマには、理屈を超えて人の心を揺さぶる「何か」が確実に宿っています。

BEYOND THE 60 SECONDSここから先は、深掘りレビュー。
Technical Review

「演技」を超えた「憑依」の領域

さて、深呼吸をして、この熱狂の正体を分析してみましょう。 まず語るべきは、主演・プロデュースを務める佐藤健の狂気的なこだわりです。 彼が演じる藤谷直季は、音楽に対して妥協を許さない天才ですが、それは佐藤健本人と完全にリンクしています。

演奏シーンにおいて、手元のアップをごまかさない。 これは音楽モノの鉄則ですが、本作はそのレベルが違います。 コードを押さえる指の食い込み、ドラムを叩く瞬間の筋肉の収縮。 そういった微細なディテールが、説得力を生んでいます。 「練習しました」というレベルではなく、「その楽器と共に生きてきた」時間を錯覚させる。 これはもはや演技ではなく、憑依です。

評価項目評価
演奏再現度プロ顔負け
熱量火傷レベル
脚本王道かつ骨太

【解説】 共演者たちも負けていません。 オーディションで選ばれたという新人たちの、「食らいついてやる」というハングリー精神が、作中のバンド「TENBLANK」の結成秘話と重なり、虚実皮膜のドラマを生んでいます。 彼らの目が、回を追うごとに変わっていくのを見るだけで、酒が三杯は飲めます。

音楽が「言葉」になる瞬間

本作の脚本は、セリフに頼りすぎていない点が素晴らしい。 大事なことは、すべて「音」で語られます。 メンバー間の衝突、和解、そして共鳴。 それらが演奏のアンサンブルとして表現されるため、ライブシーンがそのままストーリーのクライマックスになります。

「音が合わない」という焦燥感。 「グルーヴが生まれた」という高揚感。 これらを映像と音響だけで表現しきった演出チームには、拍手を送りたい。 特に音響設計は秀逸で、ベースの重低音がお腹に響く感覚まで再現されています。 これはスマホのショボいスピーカーではなく、良質なヘッドホンか、できれば重低音の効くスピーカーで体感してほしい。 音が、物理的に空気を震わせる感覚を味わえます。

「王道」を真正面から殴る強さ

ストーリー自体は、天才と凡人、挫折と再生を描いた、ある意味で「ベタ」な王道展開です。 しかし、このベタさが全く古臭く感じないのはなぜか。 それは、制作陣が小手先の変化球に逃げず、直球ど真ん中を全力で投げ込んでいるからです。

「音楽で世界を変えるなんて綺麗事だ」と笑う現代社会に対して、 「うるせえ、俺たちは本気だ」と中指を立てるような力強さ。 その純粋なエネルギーが、ひねくれた大人の心(私のことです)の防御壁をやすやすと突破してきます。 見ている間だけは、自分も何かに熱くなれる気がする。 そんな魔法にかけてくれる作品です。

青春を拗らせた大人たちへ

見終わった後、私は押し入れの奥から埃を被ったギターを引っ張り出しました。 (Fコードで挫折してすぐ戻しましたが) このドラマには、人に何かを始めさせる、あるいは忘れていた何かを思い出させる力があります。

「もういい歳だし」「どうせ無理だし」。 そんな諦めの言葉でコーティングされた日常に、風穴を開けてくれる。 これは若者向けの青春ドラマに見えて、実は青春を未消化のまま大人になってしまった私たちのための鎮魂歌(レクイエム)であり、応援歌なのです。

結論:防音室の準備はいいか?

音楽が好きなら観る義務があります。 俳優ファンなら、推しの新たな一面に気絶するでしょう。 そして、日々に退屈しているあなた。 このドラマは、あなたの心に火をつけます。 ただし、見終わった後のテンションで高額な楽器を衝動買いしないよう、クレジットカードは隠してから再生することをお勧めします。

84点。 マイナス分は、見終わった後の「俺は何をやっているんだ」という賢者タイムが辛すぎるからです。

作品情報

時間全8話
視聴難易度低い
家族向け推奨
配信Netflix
小林 祐太
WRITTEN BY

小林 祐太

TV60編集長。脚本構造と映像技術の分析に基づいた『構造批評』を得意とする。ガジェットレビューでは、スペック数値よりも『生活への定着度』を重視し、最低1ヶ月以上の実使用を経た上での評価を徹底している。

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