映画『ラバー』ネタバレなし感想・評価|殺人タイヤが砂漠を転がる。それ以外に何の説明がいる?【レビュー】
映画『ラバー』ネタバレなし感想・評価。主人公は「タイヤ」。念力で人間の頭を吹き飛ばす、前衛的すぎるロードムービー。意味を求めたら負け。これは観る人への挑戦状だ。
60秒で結論買うべき?観るべき?
GOOD
「タイヤが可愛い」と思えてくる自分に恐怖する
BAD
「No Reason(理由はない)」を許容できないと、ただの拷問時間
冒頭の宣言:「理由はない(No Reason)」
この映画は、観客に対する宣戦布告から始まります。
警官がカメラに向かって語りかけます。 「E.T.はなぜ茶色い? 理由はない」 「『戦場のピアニスト』の主人公はなぜ隠れて生活する? 理由はない」
そして高らかに宣言します。 「この映画は『理由はない』へのオマージュである」と。
つまり、「なんでタイヤが動くの?」「なんでタイヤが超能力使えるの?」 といった疑問を持つこと自体が、この映画ではナンセンスなのです。
このルールを受け入れられない人は、 開始10分でテレビを消すことになるでしょう。 逆に、これを受け入れられた人だけが、 この奇妙な映像トリップに参加する資格を得るのです。
タイヤの「演技力」に脱帽
主人公の名前はロバート。 砂漠に捨てられた古タイヤです。
彼はある日、突然覚醒し、自力で立ち上がり、転がり始めます。 この「立ち上がる」シーンの挙動が、妙にリアル。 よろよろとバランスを取り、一度倒れ、また起き上がる。 まるで生まれたての子鹿のような愛らしさがあります。
そして彼は、自分の前に立ちはだかる物を破壊し始めます。 最初は空き瓶、次はサソリ、そして人間。
タイヤが「怒っている」ように見える。 タイヤが「欲情している」ように見える。 ただのゴムの塊なのに、そこに感情を読み取ってしまう。
これは、観る側の想像力を試す実験映像なのかもしれません。 (シャワーを浴びる女性を覗き見するタイヤの姿は、完全に変質者のそれでした)
映画内映画というメタ構造の罠
この作品の厄介なところは、 「タイヤの物語」を遠くから双眼鏡で眺める「観客たち」が登場する点です。
砂漠の真ん中に集められた彼らは、私たち視聴者の代弁者です。 「つまんねえな」 「もっと派手なことやれよ」 「意味わかんねえよ」
彼らは文句を垂れ流しながら、タイヤの殺戮劇を鑑賞します。 そして、徐々に彼ら自身も物語に巻き込まれ、理不尽な死を迎えていく。
監督は、 「B級映画に文句を言いながら観ているお前らも、同罪だぞ」 と嘲笑っているのかもしれません。 非常に性格の悪い(褒め言葉)構成です。
| キャラクター | 役割 | 死亡率 |
|---|---|---|
| ロバート(タイヤ) | 主人公(殺人鬼) | 不死身? |
| 観客たち | 視聴者のメタファー | ★★★★★ |
| 警官 | 狂言回し | ★★★☆☆ |
【解説】 劇中の「観客たち」には、毒入りの七面鳥が振る舞われます。 それを食べて次々と死んでいく姿は、 「質の悪い映画(毒)を消費させられる観客」への皮肉にも見えます。 唯一生き残った車椅子の男が、最後まで文句を言い続けるラストも象徴的です。
頭部破壊シーンの美学
ロバートの武器は「念力」です。 タイヤを小刻みに震わせると、 対象物の頭が「パンッ!」と破裂します。
この破裂エフェクトが、妙に美しい。 『スキャナーズ』へのオマージュを感じさせる、 昔ながらの特殊効果による頭部爆発。
CG全盛の時代に、あえて実写の爆破にこだわる。 そこに、監督の歪んだこだわりを感じます。
タイヤが震える ↓ 不穏な音が鳴る ↓ ドカン!
この単純な繰り返しのリズムが、 だんだん癖になってくるから不思議です。
結論:アートかゴミか、決めるのはあなた
『ラバー』は、 「シュールレアリスムのアート映画」として観れば傑作かもしれません。 しかし、「モンスターパニック映画」として観れば、間違いなくゴミです。
タイヤが転がる映像を、延々と見せられる82分間。 それを「退屈」と感じるか、 「禅の境地」と感じるか。
私は正直、途中で3回くらい寝落ちしそうになりました。 でも、観終わった後に、 道端のタイヤを見て「おっ」と反応してしまう自分がいました。
あなたの感性が正常か異常か。 それを測るリトマス試験紙として、この映画を活用してみてください。
作品情報

小林 祐太
TV60編集長。脚本構造と映像技術の分析に基づいた『構造批評』を得意とする。ガジェットレビューでは、スペック数値よりも『生活への定着度』を重視し、最低1ヶ月以上の実使用を経た上での評価を徹底している。
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